Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:甲状腺・その他

(S451)

甲状腺悪性リンパ腫の超音波像と組織像との対比

Comparison of ultrasonograms with histopathological characteristics in malignant lymphoma of the thyroid

田中 浩美1, 園部 宏1, 坂本 恭子1, 廣井 綾子1, 海原 恭子1, 高蓋 啓介1, 池田 妙子1, 羽原 利幸1, 和久 利彦2

Hiromi TANAKA1, Hiroshi SONOBE1, Kyoko SAKAMOTO1, Ayako HIROI1, Kyoko KAIHARA1, Keisuke TAKAFUTA1, Taeko IKEDA1, Toshiyuki HABARA1, Toshihiko WAKU2

1公立学校共済組合 中国中央病院検査科, 2公立学校共済組合 中国中央病院外科

1Department of Laboratory Medicine, Chugoku Central Hospital, 2Department of Surgery, Chugoku Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
稀な甲状腺悪性リンパ腫(以下ML)の多くは橋本病を背景に発症する.一方,本疾患は,超音波(以下US)検査Bモード断層像でびまん性あるいは結節性病変を示すが,後方エコーの増強を伴い,嚢胞様にみえるpseudocystic echo 像として描出されることが特徴とされている.しかし,これまでに当院で経験した甲状腺悪性リンパ腫をみると,US検査で典型的なpseudocystic echo像を呈したものはむしろ少数であった.この成因を明らかにするために,これらの症例についてUS像と組織像との比較検討を行なった.
【対象】
2008年1月〜2010年4月に甲状腺US検査を行い,手術材料の病理所見より甲状腺MLと診断された8例(DLBCL3例,MALT5例)を対象とした.患者の年齢は51-80歳(平均70.7歳)で,女性6例,男性2例であった.臨床的に甲状腺腫大は8例中7例に認め,そのうち急速に増大した症例は4例であった.術前に橋本病と診断されたものは7例で,3例に甲状腺機能低下を認めた.
【方法】
1)US所見の分類 US検査は,仰臥位頸部過伸展位で,LOGICS6,探触子M12L(GE Yokogawa Medical Systems,Tokyo)を用いて施行した.US所見上,明らかな結節を形成するものをNodule type,結節形成が明らかでないものをDiffuse typeに分類した.また,病変内部のエコーレベルの低さと後方エコーの増強の有無からpseudocystic echo像か否かの判定を行った.2)組織学的所見の分類 Nodule typeあるいはDiffuse typeの腫瘍内の膠原線維成分と甲状腺濾胞成分の各々の占める割合を半定量的に評価した.判定は, HE,マッソントリクローム,AE1-AE3染色の各標本の全視野を100倍で観察し,各々の成分が腫瘍内に全く認めないもの(0),腫瘍内に0〜10%認めるも(1+),10〜20%認めるものを(2+),20〜30%認めるもの(3+),30〜40%認めるもの(4+),40%以上認めるもの(5+)とした.
【結果】
US所見による分類では,Nodule typeは3例,Diffuse typeは5例であった.この8例中pseudocystic echo像を呈したものはNodule typeの3例のみであった.腫瘍内で膠原線維成分の占める割合は,Nodule typeでは(1+)が3例中2例を占め,(3+)〜(5+)はみられなかった.Diffuse typeでは(3+)以上のものが5例中3例を占め,(0)〜(1+)はみられなかった.腫瘍における甲状腺濾胞成分の占める割合は,Nodule typeでは(0)〜(1+)が3例全例を占め,(3+)〜(5+)はみられなかった.Diffuse typeでは(3+)以上のものが5例中3例を占めた.従って,Nodule typeに比べてDiffuse typeの症例の方が腫瘍内の膠原線維成分や甲状腺濾胞成分の量が多い傾向がみられた.尚,組織亜型をみると,Nodule type3例中1例がMALT,2例がDLBCLで,Diffuse type5例中4例がMALT,1例がDLBCLであり, Nodule typeにDLBCLが,Diffuse typeにMALTが多い傾向を示した.
【考察】
当院で病理学的に甲状腺MLと診断された8例で本疾患のUS上の特徴所見であるpseudocystic echo像を呈したものは3例でいずれもNodule type であった.一方,pseudocystic echo像を呈さなかったDiffuse type 5例は腫瘍内の膠原線維成分や甲状腺濾胞成分が多い傾向を示した.従って,病変は腫瘍細胞の局所的増殖により限局性低エコー像を呈するが,病変内に線維化や残存する甲状腺濾胞成分があるとそれらがエコーの反射源となり,病変部の後方エコーの増強を伴わなくなるものと推測された.
【まとめ】
甲状腺MLのUS検査は,その特徴像により術前診断に有用である場合もあるが,組織の構成によっては特徴像を示さない場合もあり,他の検査を併用しながら診断を進めていくことが重要である.