Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:体表・組織弾性

(S448)

術前化学療法効果判定におけるShearWave Elastographyの有用性

The utility of ShearWave Elastography in predicting the effects of neoadjuvant chemotherapy

伊藤 淳

Jun ITO

福島県立医科大学医学部器官制御外科学講座

Organ Reguratory Surgery, Fukushima Medical University

キーワード :

【背景と目的】
近年,乳癌の治療において,初診時に腫瘤径が大きい症例,および腋窩リンパ節に転移を認める症例に対しては,積極的に術前化学療法が行われるようになってきている.その効果判定としては造影CTやMRI,乳房超音波が通常用いられ,効果判定における従来のエラストグラフィの有用性も報告されている.ShearWave Elastography(以下,SWE)は,SuperSonic Imagine社によって開発された,新しい原理のエラストグラフィである.これは,探触子からshear wave(せん断波)を発生させ,そのshear waveの組織内の伝播をキャプチャーすることにより,伝播速度から組織弾性の絶対値を計算し,弾性の差をリアルタイムにカラー表示するものである.画像上の目標部位の組織弾性をキロパスカル単位で測定することができ,定量性に優れた特徴を持っている.我々はこのSWEを用いて,術前化学療法の効果判定における有用性について検討を行ったので,その使用経験を含めて報告する.
【対象と方法】
対象は浸潤性乳管癌4例,浸潤性小葉癌1例の計5例.年齢は39歳から76歳(平均年齢54.8歳).Subtypeの内訳はLuminalA 2例,LuminalB 1例,トリプルネガティブ乳癌2例.化学療法の内容としては,FEC療法→3wPAC療法が4例,1wPAC+トラスツズマブ療法が1例.それらの臨床学的効果判定はPR(部分奏功)が3例,cCR(臨床学的完全奏功)が2例であった.使用機器はAixplorer(SuperSonic Imagine)である.
【結果と考察】
SWEでは,化学療法の経過にともなう腫瘍組織弾性の低下が観察でき,化学療法の効果をより定量的に捉えるのに有用であると思われた.また,造影CT,MRIでcCRと判定される症例については,腫瘍が存在していた部位に認める低エコー領域の弾性が,周囲の正常乳腺に比べて低く(軟らかく),cCRの判定,およびpCR(病理学的完全奏功)の予測にSWEが有用である可能性が示唆された.まだまだ経験が少ないため,今後症例を重ねて検討していきたい.