Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:乳腺・その他

(S447)

4Dプローブを用いた超音波によるバーチャル乳管内視鏡の開発

Virtual mammary endoscopy of ultrasound image using 3D probe

栗田 武彰1, 栗田 幸子1, 岡村 陽子2, 嶺 喜隆2

Takeaki KURITA1, Sachiko KURITA1, Yoko OKAMURA2, Yositaka MINE2

1くりたクリニック乳腺・甲状腺, 2東芝メディカルシステムズ超音波開発部

1Breast and Thyroid, Kurita Clinic, 2Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
近年,超音波診断装置の進歩や3D専用プローブの登場により,分解能の高いボリュームデータを広範囲かつ一度に収集することが可能となった.この技術を利用してバーチャル乳管内視鏡像の作成を試みたので,その結果を報告する.われわれは“超音波によるバーチャル乳管内視鏡”を“3Dプローブによって収集された分解能の高いボリュームデータを再構築することにより,乳管内部をあたかも実際の内視鏡で観察するように検索する技術”と定義した.乳頭異常分泌を訴える患者にとって乳管内視鏡は乳管造影とともに重要な検査法であるが,施設が限定されることや苦痛を伴う検査であるため,内視鏡を挿入することなく非侵襲で簡便な超音波検査にて乳管内の様子を観察できれば,バーチャル乳管内視鏡開発の意義は大きいと考える.
【方法】
使用装置はAplioXGTM(東芝),探触子はPLT-1204MV(4Dリニアプローブ/ 12MHz).乳管拡張や嚢胞内腫瘤の症例を低速揺動Single Sweepモードを用いてボリュームデータの収集を行った.収集したボリュームデータをCTで広く利用されている仮想内視鏡像を応用した試作ソフト(FlyThru:東芝メディカルシステムズ)で読み込みバーチャル乳管内視鏡の画像を作成した.FlyThruソフトには超音波診断装置のMPR像上で,視点を指定することで,視点から最長距離にある壁に向かって自動で視点が移動して管内を進んでいくAuto FlyThru機能と視点方向をカーソルにて任意に指定した方向へ進んでいくManual FlyThru機能がある.
【結果】
作成されたバーチャル乳管内視鏡像は実際の内視鏡像に似た画像が得られた.また任意の視点で拡張した乳管を進む様子が動画で観察でき,内腔面の状態や分岐の様子が観察できた.Auto FlyThurでは,拡張乳管が全長にわたり自動的に観察でき,Manual FlyThurでは,病変部分を任意の視点より詳細に観察することが可能であった.さらに嚢胞内腫瘤の腫瘤部分の性状の把握にも有用であった.
【結論・考察】
FlyThru機能を3Dプローブで得られたボリュームデータに応用することにより,バーチャル乳管内視鏡像を作成し,乳管内部をあたかも実際の内視鏡で観察するように検索する新しい技術の可能性が示唆された.バーチャル乳管内視鏡の利点として,まず実際に内視鏡を挿入しなくても管腔内の観察ができるので,患者への侵襲がほとんど無いことや検査者の技術に左右されないことが挙げられる.画像の再構成に要する手間と時間ほとんどなく,通常の検査の延長として利用できる.次に,視点の部位や方向を任意に設定できるので,内視鏡が通過できない部位よりも遠位のから視点や内視鏡が挿入できないような細い乳管も観察可能である.さらに,内視鏡では得られない管腔外の情報も同時に得られるので,管腔周囲への浸潤の推定や,切除範囲の決定などのシミュレーションにも応用できる.また,フローイメージと併せての良悪性評価にも可能性は広がる.欠点は本来の内視鏡像と比較すると当然分解能は劣り,質感や色彩は不明で,生検という重要な処置もできない.内視鏡検査に置き換わるものではないが,繰り返して実施できるので良性病変の経過観察等には適しており,実際の内視鏡検査の適応をある程度絞り込むことが可能と考える.今後画像処理の高速化により短時間で高画質の画像を広範囲に撮像できる装置の実用化を進めるとともに,実際の乳管内視鏡の画像との比較が極めて重要な課題となる.