Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:乳腺・その他

(S447)

超音波乳癌検診20年の成果と課題-偽陰性癌の分析を含めて-

Current status and problems of breast cancer screening by ultrasonography. - Including the analysis of false negative cases -

三原 修一1, 木場 博幸2, 田中 信次2, 平尾 真一2, 光永 雅美2, 緒方 敬子2, 河野 美保2, 川口 哲1, 大竹 宏治1

Shuichi MIHARA1, Hiroyuki KOBA2, Shinji TANAKA2, Shinichi HIRAO2, Masami MITSUNAGA2, Keiko OGATA2, Miho KAWANO2, Tetsu KAWAGUCHI1, Kouji OTAKE1

1日本赤十字社熊本健康管理センター内科, 2日本赤十字社熊本健康管理センター画像診断課

1Department of Internal medicine, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center, 2Department of image diagnosis, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center

キーワード :

我々は,1992年4月から人間ドックおよび地域・職域集団検診において,超音波(US)による乳癌検診を行ってきた.今回,これまでの成績を分析し,その成果と課題について検討した.偽陰性癌の分析結果も含めて報告する.
【方法】
我々は現在,施設内では装置9台,集団検診では専用の超音波検診車10台(装置11台)を用いて腹部超音波検診と同時に乳癌検診を行っている.スクリーニングは全て技師が行い,全員が超音波検査士の取得をノルマとしている(現在消化器35名,体表24名,泌尿器18名).画像記録はすべて独自のファイリングシステムで行っており,前回との比較読影も瞬時に可能なシステムを構築している.装置1台あたりの処理人数は,1時間当たり10名程度を基本としている.
【超音波検診成績】
1)2008年3月までのUS検診延べ受診者数は201,636名,有所見者数31,889例(有所見率15.8%),要精検者数3,702例(要精検率1.8%),精検受診者数3,445例(精検受診率93.1%)で,発見された乳癌は293例(発見率0.15%)であった.乳癌発見率は徐々に上昇し,最近では0.15〜0.2%である.2)検診受診例を分析すると,初回検診発見癌148例(50.5%),逐年検診発見癌103例(35.2%),2年以上前受診例42例(14.3%)であった.また,検診では発見されず,その後1年以内に判明した中間期癌および同時施行したマンモグラフィ(MMG)で発見された偽陰性癌は48例であった.3)初回検診発見癌と逐年検診発見癌を比較検討した結果,逐年発見癌では腫瘍径が小さい,早期癌が多い,非浸潤癌が多い,温存手術例が多い,非触知例が多い傾向を認め,逐年検診の有用性が示唆された.4)逐年検診発見癌の前回の所見を見ると,69例(67.0%)が異常なし,25例(24.3%)が腫瘤,8例(7.8%)が嚢胞,1例が低エコー域であった.腫瘤のうち12例は要精検と判定していたが4例は精検未受診,8例は精検偽陰性であった.13例は経過観察と判定していた.5)偽陰性癌を分析した結果,乳癌発見の経緯は,同時に施行したMMG21例(55.3%),自覚症状11例(28.9%),超音波所見が心配で病院受診2例(5.3%),他の検診で精査2例(5.3%)であった.超音波検診時の所見は異常なし35例(72.9%),腫瘤5例(10.4%),嚢胞5例(10.4%),その他3例であった.偽陰性癌の病期は0期が15例(44.1%),1期が9例(26.5%),2a期が7例(20.6%),3期が3例(8.8%)であった.また,25例(65.8%)に温存手術が施行された.すなわち,MMG併用の有用性と自己触診の重要性が示唆される.6)超音波乳癌検診の精度を検討した.偽陰性癌を中間期癌およびMMGで検出された偽陰性癌とすると,感度85.9%,特異度98.4%,陽性反応適中度(PPV)8.5,正診率98.4%,偽陰性癌に逐年検診発見癌も含めると,感度55.1%,特異度98.4%,PPV5.5,正診率98.3%で,逐年検診の有用性が示唆された.
【まとめ】
超音波による乳癌検診は逐年検診が有用である.また,偽陰性癌の分析からは,精検受診勧奨の徹底と適切な医療機関の選択が重要であること,MMGの併用が有用であること,および自己触診の啓発も有用であることが伺えた.我々は今後もさらに,超音波乳癌検診の精度向上と普及に向けて努力していきたいと考えている.