Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
体表・表在:乳腺・その他

(S446)

乳腺自動スキャン超音波による遠隔画像診断:新たなワークフローの構築について

New Workflow of Teleradiology Using Automated Whole Breast Ultrasonography

中田 典生1, 宮本 幸夫1, 西岡 真樹子1, 白川 崇子2, 福田 国彦1

Norio NAKATA1, Yukio MIYAMOTO1, Makiko NISHIOKA1, Takako SHIRAKAWA2, Kunihiko FUKUDA1

1東京慈恵会医科大学放射線医学講座, 2JR東京総合病院放射線科

1Department of Radiology, The Jikei Univsrsity, School of Medicine, 2Department of Radiology, JR Tokyo General Hospital

キーワード :

【目的】
近年,また機械化された超音波探触子による乳腺全体の自動スキャンが可能な装置が開発され,その臨床的有用性についての研究が行われるようになった.一方,日本でも遠隔画像診断が普及しつつあり,乳腺においても従来から行われているCTやMRIに加えてマンモグラフィの遠隔画像診断が厚労省のモデル事業として始まっている.また乳腺を含む超音波検査によるWork-Related Musculoskeletal Disorders (WRMSD)が欧米で問題となっている.そこで今回我々は,乳腺自動スキャン超音波診断装置を用いた遠隔画像診断を行うシステムを開発して実用化,この新しい新手法の報告と人間工学や医療情報学的観点に立って従来の方法との比較検討を目的として研究を行った.
【対象と方法】
対象は2010年9月22日から2011年1月10日までに遠隔読影を施行した乳腺超音波31例である.超音波診断装置は,シーメンス社製ACUSON S2000 ABVSを使用した.超音波探触子は高周波数帯域(5から14MHz)に対応した視野幅の広い電子リニア型プローブを用いた.画像転送のネットワークは,FTTHを用いてVPNにて名古屋のクリニックから宇都宮の遠隔運用センターを介して東京の読影端末PCとの間で遠隔読影を行った.読影端末のシステムは遠隔運用センターにある仮想デスクトップ環境のシステムを用いた.
【結果と考察】
乳腺スキャンは左右各3ポジション,計6ポジション行われた.遠隔画像診断では,画像転送量が増加するとPCに負荷がかかるため,短軸像のみを転送した.その結果1ポジション318枚,合計1908枚の画像となり1症例あたり約405GBの容量となった.読影システムは従来の遠隔画像診断で用いたものを専用システムとして開発した.超音波診断は術者の技術により画質が左右され,スキャン範囲の全テータを収集保存がなされることは稀であり,動画像でデータが収集されていたとしても絶対空間座標が不明であるため,客観的な画像の比較が困難であった.今回の手法では,乳頭を基準とすることにより,客観的位置情報の比較検討が可能となり,自動スキャンによる画質のばらつきも従来の超音波検査より改善された.この新手法により,検査時に収集されたDICOM画像をPACSに転送保存後,放射線科医にとって一般的である遠隔画像診断システムを用いて読影するというワークフローを,乳腺超音波検査についても適応させることが可能であった.検査の現場には,乳腺超音波に特化した検査士がいなくても検査が可能であった.しかしながら導入初期においては,自動スキャンの位置決めや詳細について,乳腺超音波専門医による撮影条件の改善を検査現場に指示する必要性があった.またワークフロー自体は,遠隔読影医にとって馴染み深いものであるが,乳腺超音波診断を得意とする放射線科医が日本に数多くいるとはいえない現状が問題と思われた.また乳腺自動スキャンにより得られた超音波像の画質はデジタル以前の画像と比較すると遥かに良好が画質ではあるが,1cm未満の病変については,付加的にフリーハンドによる超音波検査を追加したい症例も存在し,今後のワークフローのさらなる改善の余地はあると考えられた.しかしながらこれらの問題点を考慮しても,従来の超音波画像の客観性の欠如という欠点と超音波検査における術者のWRMSD軽減という点で,今回の新手法には革新的な利点があると考えられた.
【結論】
本システムは従来の乳腺超音波検査のワークフローを革新的に変えると考えられた.