Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
泌尿器:腎・泌尿器

(S443)

造影超音波検査による腎腫瘍診断 腫瘍微小循環での検討

Usefullness of contrast enhanced ultrasound on differential diagnosis for renal tumor

山本 徳則, 服部 良平, 後藤 百万

Tokunori YAMAMOTO, Ryouhei HATTORI, Momokazu GOTOH

名古屋大学医学部付属病院泌尿器科

Department of Urology, Nagoya University

キーワード :

【目的】
近年超音波検査を含めた画像検査で早期に腎細胞癌の診断がなされ,予後改善に寄与することから,その確定診断が微小血管を反映する造影画像診断での鑑別診断が進歩している.しかしながら,CT検査,MRI検査の微小血管の評価は腎障害症例では困難でまた微小血管の詳細を評価するのは限界がある.そこで,我々は,腎腫瘍診断における造影超音波検査の有用性を検討した.
【対象・方法】
術前あるいは術中に腎腫瘤性病変に対し,超音波診断装置はLOGIQ7 (GE横河メディカルシステム)を用い,2.0から5.5 MHzのconvex probe(4C)を 用いてソナゾイド造影超音波検査を施行した.腫瘍及び腫瘍近傍の正常腎実質に関心領域を設定し経時的な造影効果の変化を表すtime intensity curve (TIC) を作成し解析を行った.
1)造影効果のpeakまでの時間 (time to the contrast enhancement peak: TTP) 2)ベースラインからのintensityの変化: デルタIそして3)デルタI/TTP について解析を行った.2008年3月から2009年10月まで根治的腎摘除術または 腎部分切除術により,病理組織学的に確定診断が得られ た腎腫瘤性病変を有する31例(31例中11例は嚢胞性病変,20例は充実性病変)を対象にTICを腫瘍と正常組織で比較検討した.
【結論】
造影剤のピークまでの時間は正常組織と比較して悪性腫瘍で有意に早くその勾配も同様に 高かった腎細胞癌のタイプでもその病変が小さく最も診断に苦慮するのう胞腺癌の症例を提示する.横断面を示す造影CT検査ではのう胞内に造影される隆起病変が明らかではないが,造影超音波検査ではのう胞内に造影される隆起病変とイメージングされ,TICも腫瘍性の微小循環特性を示した.一方出血性嚢胞(n=3)では造影効果が認められなかった.この腎腫瘍血管特性を応用して造影CT検査,MRI検査できない腎障害症例(n=5)に対して造影超音波検査を行い上記所見を得て,診断を確定した(5/5).また,造影CT検査,MRI検査で比較的均一で造影効果が乏しいいわゆるhypovascular tumor(n=7)(腎細胞癌5症例,腎血管脂肪腫2症例)に対して上記所見を得て良性と悪性の鑑別診断が可能であった(7/7).その術前鑑別診断としてFusion imagingを2症例行っている.4)考察腎腫瘍に対する造影超音波検査における濃度時間曲線を解析することによって腎腫瘍内を流れる微小血管の信号を映像化し,その流れの差から腎腫瘍診断鑑別の可能性が示唆された.正常組織と比較して非常に早期に造影剤が流入する理由として腫瘍血管新生によるものと考えられる.すなわち比較的太い腫瘍血管新生はその末梢の毛細血管血流流入を早める.また 微小循環を制御する重要な役割を果たす,細動脈レベルでの腫瘍新生血管では平滑筋の欠如による構築異常機能異常と微小循環調節機構の欠陥のある腫瘍新生血管も造影剤の流入を早めこのような微小循環血管特性を示したものと考えられた.また,他の画像検査との比較では大きなシステムが必要な造影CTまたはMRI断層検査と比較して(1)最も隆起性病変がクリアーに描出可能な断面でイメージングが得れること(2)造影剤が血管外にすること(CT断層造影剤のみ)(3)時間分解能が高いこと(4)腎機能障害症例にも検査可能であることより今後臨床での重要な腎微小循環をreal timeに評価する画像検査である.