Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
泌尿器:腎・泌尿器

(S442)

乳頭状腎細胞癌に対する造影USの有用性の検討

Usefulness of Contrast-Enhanced Sonography for the diagnosis of Papillary Renal Cell Carcinoma

齊藤 弥穂1, 丸上 永晃1, 山下 奈美子1, 吉田 美鈴1, 森本 由紀子1, 高橋 亜希2, 武輪 恵2, 平井 都始子1, 大石 元1, 平尾 佳彦3

Miho SAITO1, Nagaaki MARUGAMI1, Namiko YAMASHITA1, Misuzu YOSHIDA1, Yukiko MORIMOTO1, Aki TAKAHASHI2, Megumi TAKEWA2, Toshiko HIRAI1, Hajime OHISHI1, Yoshihiko HIRAO3

1奈良県立医科大学中央内視鏡超音波部, 2奈良県立医科大学放射線科, 3奈良県立医科大学泌尿器科

1Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara medical university, 2Department of Radiology, Nara medical university, 3Department of Urology, Nara medical university

キーワード :

【背景】
腎細胞癌の約70%は淡明細胞癌で,造影CTやMRIで造影早期に強い濃染を示し内部は壊死や出血を反映して不整な造影欠損を伴うことが多い.一方,乳頭状腎細胞癌は腎細胞癌の約10〜15%を占め,組織学的には小型で細胞質の乏しい癌細胞が1層に配列する1型と,好酸性の豊富な細胞質を有する異型性の高い2型に分類されるが,いずれも造影CTやMRIでは淡明細胞癌のような強い濃染がみられず,出血性嚢胞など良性腫瘤との鑑別に苦慮することが多い.
【目的】
乳頭状腎細胞癌の造影US所見の特徴を検討し,造影CTやMRIと比較して,質的診断に対する有用性を検討した.
【対象と方法】
2007年から2010年に当院で腎腫瘤性病変に対して造影USを施行した19例の内,手術により組織学的に乳頭状腎細胞癌と確認された6症例.乳頭状腎細胞癌1型が2例(3.2,3.8cm),2型が4例(1.0〜22.0cm).使用装置はGE LOGIQ7,4Cプローブ,corded phase inversionモードおよびLOGIQ E9 C1-5プローブを使用し,amplitude modulationモードで観察した.ソナゾイドは0.01ml/Kg体重を静注使用し,MI値は0.2程度に設定した.また腎機能低下のある2症例を除く4症例については,術前に造影CTおよび造影MRIが実施されており,画像所見と造影US所見を比較検討した.
【結果】
Bモード所見:1型,2型ともに4cm以下の病変は,境界明瞭で内部に嚢胞部分を伴う比較的均一な低エコー腫瘤,2型で径7cmを超える2例は充実部分や隔壁を有する巨大な嚢胞性腫瘤を呈した.カラードプラ所見:いずれも辺縁と充実部に明瞭なカラー表示がみられた.造影US所見:いずれも充実部に早期から濃染が確認され,腫瘍血管は微細で染影もほぼ均一であった.1型は早期のwash outを呈したが,2型の嚢胞性腫瘤は染影の持続がみられた.2型の充実性腫瘤を呈した2例は辺縁部に偽被膜がみられた.造影CT・MRI:組織型にかかわらず,早期の腫瘍の造影効果が乏しかった.
【考察】
今回対象となった乳頭状腎細胞癌は,1型・2型のいずれにおいてもソナゾイド造影USで,早期から充実部や腫瘍全体の明瞭な腫瘍濃染が観察され,ほぼ淡明細胞癌と同等の造影効果を認めたが,造影CTやMRIでの濃染は乏しかった.造影超音波と造影CT,MRIとの造影効果の差は,CTやMRIでは血管内だけでなく血管外に染み出した造影剤も含めた腫瘍内のヨード濃度に比例した造影効果が得られるが,造影USでは細い血管でもソナゾイドの微小気泡がわずかでもあれば染影が確認できるため,造影USでは濃染が明瞭に観察された可能性がある.造影超音波は造影CTやMRIより腫瘍血流の評価に鋭敏であり,リアルタイムに腫瘍血管や濃染が確認できることから,他画像診断で出血性嚢胞などの良性病変と鑑別に苦慮する腫瘤性病変に積極的に実施するべきと考える.また,今回対象には透析症例の2例が含まれていたが,造影超音波ではいずれも明瞭な早期の腫瘍濃染が確認できた.透析腎では乳頭状腎細胞癌の頻度が正常腎に比べて高い傾向があるが,腎排泄性の造影剤が使用困難な症例に対しても安全に繰り返し使用できる点でもその有用性は高いと考えられた.
【結論】
ソナゾイド造影USでは他画像検査で濃染所見が乏しいとされる乳頭状腎細胞癌においても早期からの腫瘍濃染像を確認することができ,質的診断に寄与することが示唆された.