英文誌(2004-)
一般口演
産婦人科:胎児心臓
(S440)
双胎間輸血症候群におけるQuintero stage分類と心不全マーカーとの関連性の検討
Association between amniotic biochemical marker and ultrasonographic staging.
中田 雅彦1, 住江 正大2, 村田 晋3, 三輪 一知郎4, 中川 剛史1, 平林 啓1
Masahiko NAKATA1, Masahiro SUMIE2, Susumu MURATA3, Ichiro MIWA4, Takeshi NAKAGAWA1, Kei HIRABAYASHI1
1徳山中央病院周産期母子医療センター, 2山口大学医学部附属病院周産母子センター, 3浜田医療センター産婦人科, 4山口県総合医療センター産婦人科
1Perinatal Care Center, Tokuyama Central Hospital, 2Perinatal Care Center, Yamaguchi University Hospital, 3Department of Obstetrics and Gynecology, Hamada Medical Center, 4Department of Obstetrics and Gynecology, Yamaguchi Grand Medical Center
キーワード :
【目的】
双胎間輸血症候群におけるQuintero stage分類は,諸種の超音波所見をもとに分類されている.しかし,必ずしも血行動態の重症度を表しているとは言い難い.そこで,心筋障害や心不全を反映する生化学的マーカーのトロポニンT(TnT)・脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の羊水中濃度とstage分類や胎児血流異常との相関を明らかにし,病態を反映した重症度の指標としての有用性を検討することを目的とした.
【方法】
倫理委員会の承認と書面による同意の上でTTTSのレーザー治療時に受血児羊水を採取し生化学的分析を行った.TnT,BNPの濃度はそれぞれ羊水中蛋白濃度で補正しpg/mg蛋白の単位で算出した.統計学的検討はP値が0.05未満にて有意と判定した.
【成績】
レーザー治療を施行した153例中77症例(stage I, II, III, IVは各20, 14, 36, 7例)について検討した.全症例におけるTnT,BNPの中央値(範囲)はそれぞれ6.5 (0.8-56.7),6.6 (0.7-93.5)だった.BNPは各stageによる差を認めなかったが,TnTは各stage間において有意差を認めた.受血児静脈管血流異常11例のTnT 値は14.9と血流正常66例の5.9 pg/mg蛋白に比較して有意に高値を示していた.また,受血児の静脈管と臍帯静脈の血流異常を含めた検討でも同様に血流異常を呈した群が有意に高値の結果が得られた.更にStage IIIにおいて受血児,供血児のそれぞれの児の血流異常による亜分類を行ったところ,受血児の血流異常を呈するstage III-R, III-RDが供血児のみ血流異常を呈するstage III-Dに比較し有意にTnTが高値となった.BNPは上述の全ての検討において有意な変動を認めなかった.
【結論】
羊水中のTnTの上昇は,受血児のうっ血性心不全を示唆する血流異常において有意に上昇していた.このことは,TnTが受血児の心筋障害を示す鋭敏なマーカーとなりうる可能性を示唆していると考えられる.また,stage IIIでは,各胎児の血流異常有無とTnTとの間に関連性を認め,stage IIIでは,亜分類を用いてそれぞれの児の病態を別個に評価する必要性があると思われた.