Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓

(S439)

当院における胎児エコースクリーニング検査の状況(第2報)

Fetal echo screening in Urasoe sogo hospital

島袋 史

Fumi SHIMABUKURO

浦添総合病院産婦人科

OBGY, Urasoe sogo hospital

キーワード :

【目的】
周産期医療においては産婦人科医師不足・産婦人科閉鎖・医事紛争等深刻な社会問題がおきている.そうした現状の中,胎児超音波検査は妊婦検診の日常検査で多忙な産婦人科医によって施行されており,十分な時間がとられているとはいえない.当院では産婦人科医の指導のもと,臨床検査技師と連携して胎児超音波検査に取り組んでおり,昨年胎児エコースクリーニングの成績を発表した.今回,その後の他院紹介例を調査し,新生児期に緊急搬送を要する異常が胎児エコースクリーニングにて検出可能か検証するため,母体紹介例と新生児搬送例の有無を調査した.
【対象】
2008年11月から2010年12月の26ヶ月間に当院で胎児エコースクリーニングを行い,胎児異常が疑われて紹介となった症例,またはこの期間の分娩で生後に異常を認めて紹介となった例.対象期間の分娩件数は764件であった.当院は,主としてローリスク分娩を取り扱い,NICUが併設されていないため,ハイリスク例は高次医療施設へ紹介している.当院は救急医療を行っている総合病院であり,産婦人科病棟は19床の混合病棟となっている.月平均分娩件数は約30件である.
【胎児エコースクリーニングの取り組み方法】
①2005年12月より産婦人科の超音波機器の新規導入:Voluson730(GE 社製)②2006年1月より胎児超音波外来の新設 週1回の午後30分枠で6名の予約検査③生理検査で心臓および腹部超音波検査に従事している6名の女性臨床検査技師が1名ずつ当番制で胎児超音波検査へ派遣される④産婦人科医が検査技師へマンツーマン実技指導⑤胎児エコースクリーニングに関する勉強会実施⑥胎児チェック項目シートを作成し検査施行している.妊娠中期(22週)以降の妊産婦を対象としたスクリーニング検査で胎児発育・胎児形態異常の有無を評価することが目的である.
【検査実績】
胎児超音波検査において,検査手技の研鑚と知識の修得が必要不可欠ではあるが,胎児超音波検査チェックシートを用いたため,複数の技師が統一した基準で検査が行う事ができ,見逃しがないように努めることができた.
【結果】
胎児異常による紹介は25例,新生児期に異常を認めての紹介は10例みられた.胎児期紹介例の内訳は,心奇形疑い6例,心臓腫瘍疑い1例,胎児不整脈疑い5例,IUGR疑い9例,口唇口蓋裂1例,横隔膜ヘルニア1例,羊水過少症1例,羊水過多1例であり,IUGR疑いでの紹介はすべて胎児エコースクリーニングではなく,通常の健診での紹介であった.新生児期紹介例は,不整脈2例,VSD2例,口蓋裂1例,尿道下裂2例,髄膜瘤1例,鎖肛1例,ASD1例であった.髄膜瘤と低位鎖肛の2例は生後1日目での新生児期搬送を要した.他は退院後の外来での紹介であった.
【結論】
胎児エコースクリーニング検査の成績の調査時期を拡大して調査した.胎児超音波検査を臨床検査技師と連携して行うことで,多忙な産婦人科医だけで行うよりもより精密な検査を行うことができ,重篤な疾患を見逃すことがないように胎児エコースクリーニングが行われたと思われる.今回の調査では児の異常による新生児搬送があった.現在は妊娠中1回のみのスクリーニング検査しか行えていないが,エコースクリーニング検査は有効に行えていると考えられる.