Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:症例

(S437)

先天性小腸閉鎖の腸捻転により広範囲の腸壊死がおこり緊急帝王切開を必要とした1例

A case of congenital intestinal atresia which needed emergency Cesarean section because of volvulus.

三村 朋子1, 関野 和2, 岡田 朋美2, 小松 玲奈2, 早田 桂2, 石田 理2, 吉田 信隆2

Tomoko MIMURA1, Madoka SEKINO2, Tomomi OKADA2, Reina KOMATSU2, Kei HAYATA2, Makoto ISHIDA2, Nobutaka YOSHIDA2

1岡山赤十字病院産婦人科, 2広島市立広島市民病院産科婦人科

1Obstetrics&Gynecology, Okayama Red Cross Hospital, 2Obstetrics&Gynecology, Hiroshima City Hospital

キーワード :

【緒言】
先天性小腸閉鎖は出生早期に外科治療を必要するが,一般的に予後良好と言われている.今回我々は先天性小腸閉鎖の腸捻転により広範囲の腸壊死がおこった1例を報告し,その超音波所見について考察した.
【症例】
症例は18歳初産婦.前医にて25週時から超音波で多発性の腸管拡張像を認め小腸閉鎖が疑われ管理されていた.徐々に腸管拡張が増大してきたため29週で当院紹介受診.初診時腸管は著明に拡張しており,蠕動を認め腸管内は超音波で低輝度であった.また胃泡の拡張は認めず羊水過多も認めなかった.30週より切迫早産のため入院管理となり安静,塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムの持続点滴を行った.小腸閉鎖に関しては週2回以上の超音波検査とNSTにて経過観察した.32週3日定期超音波検査にて拡張腸管の蠕動が消失していることを指摘したがその他は著変なかったため翌日再検査したところ,拡張腸管の腸管内が高輝度となっており胎児腹水も出現していた.また母体は胎動の減少を自覚,NSTで基線細変動が消失しNRFSとなっていため,緊急帝王切開を施行した.児は1996gの女児でアプガースコア8点/9点で出生したが,著明な腹部膨満を認め,頻呼吸とアシドーシスのため危険な状態であった.出生後3時間で緊急手術を施行,拡張腸管の捻転による広範囲の腸壊死を認め,腸切除を必要とした.生後1年以上経過した現在,短腸症候群のため加療を行っている.
【考察】
先天性小腸閉鎖は胎児期に超音波で容易に診断されることが多いが,出生後の外科治療により予後が良好なことが多いため,産科的には通常の周産期管理でよいとされている.しかし,本症例のように経過中に突然急変することがあるため注意が必要である.本症例の胎児腸管の蠕動消失,腸管内高輝度エコー,胎児腹水は腸捻転による腸壊死を起こしたことによる所見であった.このような所見を認めた場合,胎児を娩出する必要もあることを考慮しNSTなどを行い,児の状態に十分に注意して管理する必要がある.