Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:症例

(S436)

正常妊娠と胞状奇胎の双胎妊娠後に発生した胎盤部トロホブラスト腫瘍の一例

A case of placental site trophoblastic tumor caused after twin pregnancy of hydatidiform mole and normal pregnancy.

東島 愛, 吉田 敦, 城 大空, 阿部 修平, 谷川 輝美, 三浦 生子, 山崎 健太郎, 吉村 秀一郎, 増崎 英明

Ai HIGASHIJIMA, Atsushi YOSHIDA, Ozora JO, Shuhei ABE, Terumi TANIGAWA, Shoko MIURA, Kentaro YAMASAKI, Shuichiro YOSHIMURA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学産婦人科

Obstetrics & Gynecology, Nagasaki University

キーワード :

胎盤部トロホボラスト腫瘍(Placental site trophoblastic tumor, PSTT)は,子宮内の胎盤が付着していた部位の細胞(intermediate trophoblast)より発生し,絨毛性疾患における割合は1~2%と稀な腫瘍である.先行妊娠後,数週間から数年で発症し,絨毛癌と比べて化学療法の効果が低く,多臓器転移があると予後が不良な疾患である.私どもは,初診時の超音波検査で絨毛膜下血腫様の像を呈したが,後に正常妊娠と胞状奇胎の双胎妊娠と診断され,子宮内容除去術施行後早期にPSTTが発生した症例を経験したので報告する.
<症例>31歳 2回経妊1回経産タイミング法で妊娠し,前医で経腟超音波検査で頸管妊娠が疑われて妊娠8w6dに当科へ紹介された.当科初診時の超音波検査では子宮頸管全長が確認され,内子宮口と胎嚢は離れており頸管妊娠は否定されたが,子宮後壁に55×74mmの血流を伴わない腫瘤像を認めたため,MRIを施行したところ絨毛膜下血腫が疑われた.また,同日より性器出血と下腹痛が出現した.妊娠9w2dの超音波検査で,胎嚢の頭側に認められた腫瘤像の増大と,腫瘤内部に小嚢胞状エコーの出現を認め,初診時のhCG高値を総合して胞状奇胎が疑われた.術前の胸部単純X線検査は正常であった.妊娠8w6d 血中hCG:265,000  妊娠9w2d 血中hCG:315,600  子宮内容除去術を施行し,摘出された組織は組織学的に胞状奇胎と診断されたが,染色体検査の結果から正常妊娠と胞状奇胎の双胎妊娠と診断した(奇胎組織:47,XXX,正常妊娠の胎盤:46,XX).1週間後には再掻爬術を行い,奇胎組織の残存は認めなかった.hCGは順調に低下していたが,再掻爬翌日以降のhCG低下は緩やかであった.また,再掻爬術後も性器出血と下腹痛が持続し,両側卵巣腫大(最大径13cm)も出現したため,絨毛組織の残存を疑った.初回掻爬後30日目のMRIで子宮底部に腫瘤が出現し,胸部CTで多発肺転移を認めた.臨床的絨毛癌と診断し,単純子宮全摘術を行ったところ,MRIで認められた子宮底部の腫瘤は組織学的にPSTTと診断された.術後にエトポシドとアクチノマイシンD併用による化学療法を行い,肺転移巣は徐々に縮小したものの,10コース終了後も小さな転移巣の残存を認めており,外来で厳重な経過観察を行っている.