Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児異常・胎児評価

(S435)

超音波画像による胎児食道の描出法とその観察

Ultrasonographic depiction and observation of fetal esophagus.

青木 昭和, 石原 とも子, 中山 健太郎, 宮崎 康二

Showa AOKI, Tomoko ISHIHARA, Kentaroh NAKAYAMA, Kohji MIYAZAKI

島根大学医学部産科婦人科

Obstetrics and Gynecology, Shimane University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
胎児食道の出生前描出は日常診療の中ではほとんど行われていない.その理由の一つに描出の困難さがある.しかし,食道の機能異常,形態異常は臨床的に重要な意味を持つ.今回,我々は,解剖学的位置関係から容易に胎児食道を同定する方法を確立し,その画像の特徴について検討した.更に異常の2症例についても観察を行った.
【方法】
妊娠19週から40週までの正常単胎妊婦68例を対象とした.インフォームドコンセントを得た後,超音波診断装置にて胎児の咽頭・喉頭,気管,気管支,心臓,大血管を同定し,そこから食道の位置を推定し,その超音波画像上の特徴とその描出率を求めた.さらに,食道閉鎖症(Gross C)と空腸閉鎖症のそれぞれ1例について食道の状態を観察した.
【成績】
1,胎児食道の描出は妊娠19週から40週までの期間で可能であったが,描出率はtermに近づくにつれ低下を認めた.2,胎児食道の短軸像は2〜3個の高輝度点状エコー像として描出され,長軸像は,3本の高輝度線状エコー像が密に重なり合った像として確認された.3,短軸像の描出部位としては,心臓四腔断面よりやや尾側レベルで,心房と下行大動脈に挟まれた部位が最も容易であった.また,three vessel tracheal viewで,気管の左後方で下行大動脈の右前方でも確認しやすかった.4,矢状断面の長軸像としては,やや左側から大動脈アーチを描出し,その下行大動脈の前方が最も容易であった.また,左房後方の正中寄りでも長軸像の一部が描出されやすかった.冠状断面での長軸像としては,気管・気管支分岐部(カリーナ)の後方ないし下行大動脈やや前方を走査すると容易に描出できた.5,咽頭から食道への連続性および噴門・食道への連続性の確認は困難な場合が多かった.6,描出に要する時間は10秒以下で,観察時間は平均で30秒行ったところ,この間に嚥下運動(内腔の拡大・縮小運動)を描出できたのは11例(16%)であった(図).7,食道閉鎖症では食道の途絶と閉鎖部より口側の食道拡張が観察された.8,空腸閉鎖症では持続する著明な拡張を認めた.
【結論】
胎児食道は描出しやすい部位を観察することにより短時間で描出可能であった.また食道形態・機能異常例においても容易に異常所見の抽出が行え,その評価にも有効であった.