Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児異常・胎児評価

(S434)

18トリソミーにおける胎児超音波所見の特徴

Specific ultrasonographic features of Trisomy18

早田 桂, 小松 玲奈, 関野 和, 香川 幸子, 依光 正枝, 舛本 明生, 石田 理, 野間 純, 吉田 信隆

Kei HAYATA, Reina KOMATSU, Madoka SEKINO, Yukiko KAGAWA, Masae YORIMITSU, Akio MASUMOTO, Makoto ISHIDA, Jun NOMA, Nobutaka YOSHIDA

広島市立広島市民病院産科婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Hiroshima City Hospital

キーワード :

【目的】
一般的に予後不良とされる18トリソミーは,その特徴的な超音波所見より胎内診断は100%可能ともいわれている.けれども実際の出生前診断率は決して高くなく,多発奇形や胎児発育不全(以下FGR)といった胎内診断でフォローされた後,胎児機能不全を起こし,急速墜娩による出生後に初めて診断される症例が今なお多いのが現状である.しかし当院では過去4年間に18トリソミーを16症例経験したが,その全例を胎内診断しており,偽陽性症例は認めなかった.すなわち確実に有効な超音波所見を得ていることになる.比較的頻度の高い所見の中でも,いずれの所見を確認することが18トリソミーの胎内診断に有用であるかを検討した.
【結果】
16症例の内訳は,母体平均年齢35.4歳(25‐44歳)で,初産婦5例,経産婦11例であった.初期より当院管理1例,他院より外来紹介12例,母体搬送3例.紹介理由(重複あり)は切迫流産1例,切迫早産3例,FGR11例,前期破水2例,羊水過多6例,心構築異常5例,単一臍帯動脈2例,大槽拡大1例,胃胞確認困難1例,手指拘縮1例,脳内嚢胞1例で,胎児染色体異常を疑っての紹介例はなかった.全例初回あるいは2回目の胎児超音波で,18トリソミーを疑っており,平均診断週数29.3週(19‐33週),胎児異常の内訳はFGR16/16例(100%)(診断時平均推定体重-2.4SD).羊水過多12/16例(75%).小脳低形成16/16例(100%).手首過屈曲・拘縮16/16例(100%).揺り椅子状足底16/16例(100%).単一臍帯動脈7/16例(44%).内反足5/16例(31%).脈絡叢嚢胞5/16例(31%).胃胞狭小4/16(25%).口唇裂2/16例(12%).臍帯ヘルニア0/16例(0%).心構築異常15/16例(94%).心構築異常の内訳はDORV単独6例,DORV+VSD5例,VSD単独2例,CoA1例,TOF1例であった.診断のための羊水検査施行6例.平均分娩週数33.7週(21‐41週)で,分娩方法は経腟分娩14例(中期中絶2例,経過観察中の子宮内胎児死亡7例を含む),緊急帝王切開2例(いずれも分娩進行中の強い母体希望).出生児7例の予後は,胎児緩和ケアを施行し,看取りを選択した4例はいずれも出生後60分以内に死亡.積極的治療を希望した3例のうち2例は日齢182日目と185日目に死亡となり,現在生存は満1歳になる1例のみであった.平均出生時体重SDは-3.2SDであった.また出生後所見として耳介低位を全例に認めたが,胎内診断は行っていなかった.
【考察】
胎児超音波でFGRに羊水過多を伴った場合は,一般的に18トリソミーを疑うが,異常所見が多岐に渡るため,返って胎内診断を煩雑にしている可能性がある.当院では小脳低形成を診断する方法として,小脳前後径を確認し,妊娠週数毎の基準値を用いて判断している.また足底の観察として,揺り椅子状に加えて踵の突出の有無により注意を払い観察している.今回の検討では,小脳低形成と胎児足底,手指は全例で異常所見を呈していたため,これらの所見を抽出すれば,例え心構築異常の有無が判定困難でも,胎児超音波で18トリソミーを疑うことは可能である.また心臓を確認する場合も,まずDORVの可能性を念頭におくことで,診断自体も比較的容易となる.加えて,単一臍帯動脈や脈絡叢嚢胞等の異常確認することで,より確実な18トリソミーの胎内診断を可能としていた.