Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児異常・胎児評価

(S434)

18トリソミー胎児における小脳低形成の形態学的特長 -小脳前後径計測の意義

The importance of measuring about anteroposterior cerebellar diameter for the fetus of trisomy 18.

小松 玲奈1, 多田 克彦2, 早田 桂1, 関野 和1, 岡田 朋美1, 香川 幸子1, 石田 理1, 野間 純1, 吉田 信隆1, 宮木 康成3

Reina KOMATSU1, Katsuhiko TADA2, Kei HAYATA1, Madoka SEKINO1, Tomomi OKADA1, Yukiko KAGAWA1, Makoto ISHIDA1, Jun NOMA1, Nobutaka YOSHIDA1, Yasunari MIYAGI3

1広島市立広島市民病院産科婦人科, 2独立行政法人国立病院機構岡山医療センター産科婦人科, 3岡山大福クリニック産婦人科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Hiroshima City Hospital, 2Department of Obstetrics and Gynecology, NHO Okayama Medical Center, 3Department of Obstetrics and Gynecology, Okayama Ohfuku Clinic

キーワード :

【目的】
小脳低形成は,18トリソミーに高頻度で認められる.胎児超音波検査にて大槽や小脳横径(transverse cerebellar diameter: TCD)の測定が有用と報告されているが,小脳低形成の明確な基準は定められておらず,頻度も報告によって異なる.また,TCDが正常値である症例や大槽の拡大を認めない症例も多く報告されており,TCDと大槽の計測のみではすべての小脳低形成をスクリーニングすることはできないと考えられる.今回我々は,正常および18トリソミー胎児においてTCDおよび小脳前後径(anteroposterior cerebellar diameter : APCD)を計測し,小脳低形成を検出するための指標としてどちらが優れた指標であるかを検討した.
【対象と方法】
正常胎児153例(妊娠15週1日〜妊娠34週6日)を対象に超音波検査を施行し,TCDおよびAPCD を計測し基準値を作成した.次に,18トリソミー胎児34症例,延べ51回のTCDおよびAPCD(以下; TCD(T18)およびAPCD(T18))を計測し,小脳の形態学的特徴について基準値と比較検討した.統計解析はANCOVA法で行った.
【結果と考察】
正常胎児ではTCD = 1.579×GA - 12.198 (R2 =0.969),APCD = 0.982×GA - 9.650 (R2 = 0.954)と示された.それぞれの基準値(5%‐95%タイル値)を作成した.18トリソミー胎児では,TCD(18)=1.248×GA-6.233 (R2=0.821) と示され,TCD(T18)とTCDの間には有意な差を認めた(p<0.01). また,APCD(18)=0.5168×GA-2.318 (R2=0.605) と示され,APCD(T18)とAPCDの間にも同様に有意な差を認めた(p <0.01).TCD - TCD(T18) = -7.10575+0.37437×GA,APCD - APCD(T18) =-7.33202+0.420037×GAであり,基準値との差はAPCDの方がより大きかった.また,18トリソミー胎児のうち22/51(43.1%)のTCD値が基準値内であったのに対し,APCD値が基準値内であったのはわずか2/51(3.9%)のみであった.
【結論】
TCD,APCDの基準値と比較して,18トリソミー胎児ではTCD,APCDともに明らかに低値であったが,APCDがより障害を受けていることが示された.小脳低形成を胎児超音波で検出するためにはTCDよりもAPCDの方が優れた指標と言える.