Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
産婦人科:分娩

(S433)

帝王切開術後鎮痛法としての超音波ガイド下腹横筋膜面ブロック(TAP block)の有用性

The Analgesic Efficacy of Ultrasound-guided Transversus Abdominis Plane Block After Cesarean Delivery

大西 庸子, 金井 雄二, 天野 完, 海野 信也

Yoko ONISHI, Yuji KANAI, Kan AMANO, Nobuya UNNNO

北里大学病院総合周産期母子医療センター

Center for Perinatal Medicine, Kitasato University School of Medicine

キーワード :

【目的】
帝王切開術後鎮痛にはフルルビプロフェンアキセチルやペンタゾシンを使用しているが,これらの鎮痛薬は使用回数や投与間隔に制限があり十分な鎮痛効果を得るのは困難である.そこで超音波ガイド下の腹横筋膜面ブロック (transverse abdominis plane nerve block : TAP block)が帝王切開術後鎮痛法として有用であるかを検討した.
【対象】
2010年4月〜11月に脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(combined spinal-epidural anesthesia: CSEA)で帝王切開術を施行した症例のうち,事前に本研究への参加同意が得られた症例.なお,TAP blockを施行しなかった症例をコントロール群とした.
【方法】
帝王切開術の麻酔はCSEAで,脊髄くも膜下腔に0.5%高比重ブピバカイン2.4mlとフェンタニル10μg投与し,麻酔レベルが不十分な場合(Th6以下)は2%リドカインを硬膜外腔に5ml追加投与した.閉創時には塩酸モルヒネ2mgと生食5mlを硬膜外腔に投与した.TAP blockの局所麻酔薬は0.375%ロピバカインあるいは0.3%レボブピバカインを無作為に選択し,超音波はALOKA ProSoundⅡを用い,コンベックス型のプローベを使用した.まず超音波で腹横筋と内腹斜筋,外腹斜筋を同定し,腹横筋と内腹斜筋の間(腹横筋膜面)までブロック針を刺入した.5%グルコールを1ml注入してブロック針の針先が腹横筋膜面にあることを確認したのち,局所麻酔薬を20ml投与した.この操作を左右同様に施行してTAP block終了とした.TAP blockを施行した症例(TAP群),TAP blockを施行しなかった症例(C群)とも術後鎮痛に塩酸モルヒネ30mgを生理食塩液42mlで希釈し,自己調節鎮痛(patient controlled analgesia: PCA)による静脈内ボーラス投与を行った.PCAは一回投与量3.0ml,充填時間30分の装置を使用し,TAP群とC群で使用回数や麻薬投与量に差があるかを比較検討した.
【結果】
TAP群54例,C群40例で,平均年齢はそれぞれ34,32歳,平均分娩週数はいずれも37週であった.TAP群の手術終了からモルヒネ初回投与までの時間,モルヒネ総投与量はそれぞれ555分,6.7mg,C群はそれぞれ215分,8.9mgであった.TAP群ではC群に比べて初回投与までの時間は有意に延長し,モルヒネ総投与量は有意に減少した.なお皮膚切開法や局所麻酔薬別にモルヒネ初回投与までの時間,モルヒネ総投与量を検討したが,皮膚縦切開でモルヒネ初回投与までの時間が延長していたが,その他の検討ではいずれも有意差は認めなかった.
【結論】
帝王切開術後鎮痛法としての超音波ガイド下TAP blockの有用性が確認された.