南 元人¹, 西澤 春紀², 関谷 隆夫¹, 岡本 治美¹, 河合 智之¹, 野田 佳照¹, 多田 伸², 長谷川 清志¹, 廣田 穰¹, 宇田川 康博¹

Yukito MINAMI¹, Haruki NISHIZAWA², Takao SEKIYA¹, Harumi OKAMOTO¹, Tomoyuki KAWAI¹, Yoshiteru NODA¹, Shin TADA², Kiyoshi HASEGAWA¹, Yutaka HIROTA¹, Yasuhiro UDAGAWA¹

¹藤田保健衛生大学産婦人科, ²藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院産婦人科

¹Obstetrics and Gynecology, FUJITA HEALTH UNIVERSITY, ²Obstetrics and Gynecology, FUJITA HEALTH UNIVERSITY Banbuntane Hotokukai Hospital

キーワード :

【目的】
妊娠中の子宮頸管の熟化に伴って，経腟超音波検査にて観察できる子宮頸管腺領域像 （cervical gland area：以下CGA）は不明瞭化する．今回我々は，妊娠36週以降の妊婦健診における内診によるBishop score （BS），経腟超音波検査による頸管長 （CL）の測定とCGA不明瞭化の検出を分娩予後規定因子と規定し，各所見と分娩予後との関連を検討した．さらに子宮頸管粘液中のmatrix metalloproteinase-2 （MMP-2），matrix metalloproteinase-9 （MMP-9）およびtissue inhibitors of metalloproteinases-1 （TIMP-1）を測定して，CGAの不明瞭化と頸管熟化の関連についても検討した．
【方法】
臨床研究に関するインフォームドコンセントを行って同意の得られた初産単胎妊娠135例を対象とした．合併症妊娠・前期破水・予定帝王切開例は検討から除外した．CGAは，経腟超音波画像で子宮頸管腔周囲に位置し，筋層とは輝度の異なる帯状領域とした（図1）．医学的介入を要した介入群と，介入なく経腟分娩に至った正常群について，分娩週数・分娩様式・出生体重・Apgar Score （AS）を，予後規定因子としてCGA不明瞭化の有無・CL・BSを，このうち42例では頸管粘液中MMP-2，MMP-9，TIMP-1，顆粒球エラスターゼ （EL）を比較した．後方視的検討で有意差を認めた因子について，同様に前方視的検討を行った．統計計算はt検定，χ2検定で行い，P＜0.05を有意差ありとした．
【成績】
介入群は正常群に比して年齢が高く，分娩週数は長く，AS 5分値は低く，CGA不明瞭化時期は遅かった（p＜0.05）．正常群と介入群の各予後規定因子の検討では，CGAの陽性率が介入群で高く（p＜0.05）（図2），CLとBS，MMP-2，MMP-9，TIMP-1，ELには差がなかった．CGA陽性群と陰性群のMMP-2，MMP-9，TIMP-1，ELの比較では，MMP-2のみが陰性群で高かった（p＜0.05）（図3）．分娩直前の健診時の年齢，BS，CL，CGA所見を説明変数とし，介入群となる危険因子を多重ロジスティック回帰分析で求めると，年齢とCGA所見が有意で，オッズ比は1.1と4.9，95％信頼区間は（1.0-1.3），（p=0.02）と（1.8-13.0），（p=0.002）であった．CGA所見を用いて前方視的検討を行ったのは46例で，CGA陽性所見を用いた医学的介入に対する診断精度は，感度82.6％，精度63.0％，リスク比2.1，95％信頼区間は（0.87-5.0）であった．
【結論】
妊娠末期の経腟超音波検査によるCGAの評価は，分娩予後の予測因子として有用で，CGA検出の有無とMMP-2との関連が示唆された．