Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患4

(S427)

散乱体密度を指標としたびまん性肝疾患の線維化進行度の評価

Evaluation of Liver Fibrosis Based on Scatterer Density Estimation

角 春郎1, 神山 直久2, 蜂屋 弘之3, 山口 匡4

Haruo SUMI1, Naohisa KAMIYAMA2, Hiroyuki HACHIYA3, Tadashi YAMAGUCHI4

1千葉大学大学院工学研究科, 2東芝メディカルシステムズ株式会社機器開発部, 3東京工業大学大学院理工学研究科, 4千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Application & Research Group, Toshiba Medical Systems Corporation, 3Graduate School of Science and Technology, Tokyo Institute of Technology, 4Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
我々はこれまでに,慢性肝炎の肝臓からのエコー信号を統計的に解析することで,スペックルノイズに混入する病変組織の情報を検出し,組織性状診断を実現することを試みてきた.本研究では,Q-Q確率プロットをベースとしたエコー信号の評価法を用いて,臨床データにおける散乱体密度の推定および病変進行度の評価を目指している.これまでに,スペックルノイズのQ-Qプロット結果が傾き2の直線となるのに対し,多くの臨床データでは直線性を失する形で表現されることが示されている.今回,プロット結果が曲線となることと組織構造変化の関係について,数学モデルおよび計算機シミュレーションを用いて検討を行うとともに,エコー信号解析に適した評価パラメータの提案を行った.また,臨床データ解析において両者の関係性を理解する際にノイズとなる情報を排除する手法について検討した.
【方法】
 非正常肝の組織形態は,均質媒質中に密度の異なる微小な組織が混在しており,そのエコー信号は分散の異なる2つの分布関数の和で近似可能である.数学モデルおよび計算機シミュレーションにおいて,2つの分布関数の分散値(組織中の散乱体密度に対応)および混在割合(病変組織の量に対応)の変化とQ-Qプロットの結果の関係について検討したところ,4つのパラメータで評価可能であると判断された.そこで,線維化ステージが判明している複数の慢性肝炎の臨床データに対し,十分なサイズのROIを臨床データ全面に対して走査して4つの評価パラメータを算出し,パラメータの組み合わせが一定の関係を満たす部分に色付けすることで,散乱体密度が高い線維部分を判定することを試みた.
【結果】
正常肝および初期から重度の肝炎において,Q-Qプロットから算出した4つの評価パラメータから散乱体密度が高いと判定される部位の大きさや混在率は,病変進行に伴って高値となることが示された.また,正常肝においても,血管壁などの肝臓実質とは組成が異なる部位において,散乱体密度が高いと判定された.複数の臨床データにおける解析結果を画像化したところ,針生検結果から分類された線維化ステージと解析結果から散乱体密度が高いと判定された部位(色付けされた部位)の量および散らばり具合に相関関係が確認できた.その際,評価パラメータの条件設定を行うことで誤検出が低減されることが合わせて確認された.