Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患3

(S424)

演題名 Tissue Doppler Elastographyを用いた肝線維化の非侵襲的評価法

Non-Invasive evaluation method of the liver fibrosis using Tissue Doppler Elastography

山本 幸治1, 福本 義輝1, 橋本 章2, 清水 敦哉2, 白木 克哉3

Kouji YAMAMOTO1, Yoshiteru FUKUMOTO1, Akira HASHIMOTO2, Atsuya SHIMIZU2, Katsuya SHIRAKI3

1済生会松阪総合病院超音波検査室, 2済生会松阪総合病院内科, 3三重大学消化器肝臓内科

1Division of Ultrasound, Saiseikai Matsusaka General Hospital, 2Department of internal Medicine, Saiseikai Matsusaka General Hospital, 3Division of Gastroenterology and Hepatology, Mie University scholl of Medicine

キーワード :

【はじめに】
 C型慢性肝疾患における肝繊維化の指標としては,現在もなお経皮的肝生検がgold standardとされている.しかし,侵襲的で合併症の危険性を伴ったり経時的な観察の持続も困難である.そこで非侵襲的測定法であるFibroscanやReal-time Tissue Elastographyなどの方法があり肝繊維化に対する評価の有用性が報告されている.今回,我々は,組織ドプラを応用して組織の変化率(ストレイン)を測定するElastographyを用いてC型慢性肝疾患における肝繊維化評価の有用性について検討したので報告する.
【対象と方法】
肝生検病理組織および臨床的に診断されたC型慢性肝炎,肝硬変の合計の84例である.超音波診断装置はAplio XG(東芝メディカルシステムズ株式会社)で,探触子はコンベックスタイプPVT-375BT(3.5MHz)を用いた.肝臓の評価場所は,肋弓下走査で肝左葉を縦断走査により描出し断面が変化しないように注意をしながら探触子で垂直に圧迫・開放を行った.次に,解析に関しては,装置に表示される速度プロファイルから最も均一に圧迫・開放を行われている時相を選択し,ある程度一定の場所に円形のROIを設定しその中の複数のストレイン値を統計値として演算処理し,同一時相の中で経時的にグラフ化された最大値を繊維化評価のパラメータとして用いた.
【原理・特徴】
今回使用したElastographyは組織ドプラ法を応用していることが特徴である.探触子の圧迫・開放の操作により得られた組織の速度情報を元に組織の変化率(ストレイン[%])を次の式を用いて算出される.Strain=(L-Lo)/Lo [%] (L:圧迫・開放により変化した組織の距離 Lo:圧迫・開放前の組織の距離)さらに圧迫・開放の様子を解析表示される速度プロファイルからモニタし任意に時相を選択することができ再現性に期待が持てる方法である.
【結果】
 組織の変化率(ストレイン)を測定したElastography値は,慢性肝炎は,0.216±0.052であったが,肝硬変では,0.079±0.023と有意に低値を示した.
【考察】
組織ドプラ法は,現在は主に循環器領域において臨床のルーチンとして浸透している方法であるが,今回肝臓領域にTissue Doppler Elastographyを応用し,肝線維化の非侵襲的評価法の一つとして臨床的に有用であるか検討をおこなった.今回使用した探触子は,コンベックスタイプでありリニアタイプに比べて圧迫が十分に加わる可能性があるが描出可能範囲が均一に圧迫されているかは少し疑問である.また用手法のため圧迫の程度により測定値に差異がでることが考えられある程度の経験が必要と考えられた.しかし,今回の検討では非侵襲的に比較的簡便に測定値が算出され,慢性肝炎と肝硬変の鑑別が可能であると考えられた.今後は,肝生検の組織と比較しステージ分類(F stage)との比較検討を行う必要がある.
【結語】
Tissue Doppler Elastographyは,肝線維化の非侵襲的評価法の一つとして有用である.