高橋 宏和¹, 水田 敏彦¹, 江口 有一郎¹, 岩根 紳治¹, 桑代 卓也¹, 磯田 広史¹, 大枝 敏¹, 安西 慶三¹, Sporea Ioan², 小野 尚文³

Hirokazu TAKAHASHI¹, Toshihiko MIZUTA¹, Yuichirou EGUCHI¹, Shinji IWANE¹, Takuya KUWASHIRO¹, Hiroshi ISODA¹, Satoshi OEDA¹, Keizou ANZAI¹, Sporea IOAN², Naofumi ONO³

¹佐賀大学医学部内科, ²Department of Gastroenterology and Hepatology, University of Medicine and Pharmacy Timişoara, ³江口病院消化器科

¹Department of Internal Medicine, Saga Medical School, ²Department of Gastroenterology and Hepatology, University of Medicine and Pharmacy Timişoara, ³Department of Gastroenterology, Eguchi Hospital

キーワード :

【背景・目的】
Acoustic radiation force impulse（ARFI） imagingは超音波を利用し非侵襲的に臓器の弾性評価を可能とする新しい技術である．我々はこれまでARFIによる弾性測定が肝線維化評価に有用であることを報告してきたが，肝の弾性を規定する要因には様々な因子が存在すると推察される．今回我々は肝における炎症に着目し，炎症が肝の弾性に与える影響を検討した．
【対象・方法】
背景疾患をC型慢性肝炎に限定しARFI測定および生検によって病理学的評価をなされた149例（平均年齢54.6±10.7歳，男性/女性63/86例）を対象とした．
検討1）ARFI測定値に影響を及ぼす因子をステップワイズ解析を用いて検討した．
検討2）病理診断における肝線維化stageを揃え，炎症（activity）grade別にARFI測定値を比較検討した．
【結果】
検討1）ステップワイズ解析においては病理学的線維化stageのみがAFRI測定値に影響する唯一の因子であり，炎症は有意な因子ではなかった．
検討2）線維化stage0-1におけるARFI測定結果はactivity grade 1 （n=22）； 1.20±0.16 m/s，grade 2 （n=5）； 1.24±0.12 m/s，grade 3は存在せずgrade 1-2間で有意差を認めなかった．線維化stage2/3においてはactivity grade 1 （n=10）； 1.23±0.28 m/s，grade 2 （n=52）； 1.48±0.59 m/s，grade 3（n=26）； 1.97±0.73 m/sと炎症が強くなるに従い有意に高い弾性を示した（grade 1 vs 3; p=0.002, activity 2 vs 3; p=0.001）．線維化stage4においては各activity grade間で有意差を認めなかった．
【考察・結語】
肝の硬度を規定する最たる因子は肝線維化であった．線維化stage別の検討で軽度線維化例，肝硬変例におけるARFI測定に炎症は影響を与えないと考えられたが中等度線維化〜前肝硬変段階の症例において炎症はARFI測定値を高くすると考えられた．炎症がどの様な機序で硬さに影響を及ぼすのか不明であるが，それらの症例における線維化評価においては炎症の影響を考慮する必要があると考えられた．