Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患2

(S422)

肝臓におけるVirtual Touch Tissue Quantificationのせん断波計測の検討

Evaluation of Tissue starin analytics in Liver by Virtual Touch Tissue Quantification

西川 徹1, 吉岡 健太郎1, 橋本 千樹1, 川部 直人1, 原田 雅生1, 市野 直浩1, 刑部 恵介1, 杉山 博子2, 青山 和佳奈2

Toru NISHIKAWA1, Kentarou YOSHIOKA1, Senjyu HASHIMOTO1, Naoto KAWABE1, Masao HARATA1, Naohiro ICHINO1, Keisuke OSAKABE1, Hiroko SUGIYAMA2, Wakana AOYAMA2

1藤田保健衛生大学医学部肝胆膵内科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部

1Department of Liver,Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University School of Medicine, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年,超音波にて非侵襲的な肝線維化評価に関する各種の報告がなされてきている.我々の施設においてもこれまでにtransient elastography(Fibroscan)やVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)にてびまん性肝疾患を中心にその有用性を報告してきた.今回,このAcoustic Radiation Force Impulse(ARFI)を用いたVTTQにおいてせん断波の伝播速度(Velocity of shear wave;Vs)を肝疾患において評価した.
【目的】
VTTQにてせん断弾性波の伝播速度(Vs)を測定し,その結果を各種疾患ごとに線維化マーカーを含む血液データおよび病理診断と比較検討し,肝臓におけるVs測定値への影響因子を検討した.
【対象】
2009年10月より2010年11月までにARFIによるVTTQを施行したHCV感染症患者423例,HBV感染症患者128例,NAFLD180例,アルコール性肝障害89例,自己免疫性肝障害26例,その他(うっ血肝,閉塞性黄疸,Budd-Chiari症候群,急性肝炎)22例の計868例を対象とした.対象の平均年齢60.5±21歳,男性629例,女性339例であった.
【方法】
使用装置は,持田シーメンス社製Acuson S-2000で,ARFIによるVTTQにてVsを測定した.測定方法は,右肋間より肝右葉で14ポイントから計測を行い,全計測値の平均値,中央値を算出した.この計測結果を疾患ごとに血液データや病理診断と比較を検討した.なお,血液データは,VTTQ施行日ないし,施行前後1ヶ月以内で最も近い日のデータを採用した.さらにVTTQ測定日と採血および病理組織診断施行時が治療の前後となる症例は除外した.また,うっ血肝,閉塞性黄疸,Budd-Chiari症候群では,治療前後にてVsを比較検討し,急性肝炎では,継時的観察を行った.
【結果】
HCV感染症患者にて肝生検を施行した102例でVsと線維化ステージは有意に相関した(ρ=0.517 r<0.0001).平均値ではF0からF2群とF3およびF4には有意差(P<0.001)を認め中央値ではさらにF3とF4においても有意差(P<0.005)を認めた.HCV感染症,HVB感染症,アルコール性肝障害,自己免疫性肝障害においてVsとTP,ALB,AST,ALT,PLT,ヒアルロン酸はいずれもP<0.001と有意な相関を認めた.NAFLDでは,単純性脂肪肝とNASHにおいてP<0.01と有意な差を認めた.うっ血肝,閉塞性黄疸,Budd-Chiari症候群では,全例で治療後にVsの低下を認めた.急性肝炎では病態の改善に伴いVsは低下した.
【まとめ】
肝疾患においてVTTQによるVs計測は,肝線維化ステージや線維化マーカーのヒアルロン酸と有意な相関を認めることから,線維化がVs値に影響する重要な因子であることが証明された.またVs値はAST,ALTとも相関を認め,急性肝炎の病態を追従するように変動することと,血行性病変や閉塞性黄疸においても病態を追従するように変動することから,炎症や肝内の圧上昇による細胞密度の上昇の影響を受けることが推察され,これらの要因については,今後Vsによる肝線維化ステージ予測において考慮する必要がある.VTTQによるVs計測は肝線維化や肝内細胞密度上昇に起因する病態の評価法として今後期待が持たれる.