Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:びまん性肝疾患1

(S419)

健診受診者を対象としたALTの正常値の推定:超音波診断による肝脂肪化例の除外の影響

Estimation of healthy ranges for serum ALT levels among subjects of health screening: Influence of exclusion of hepatic steatosis using ultrasoud

矢島 義昭1, 杉田 貴子2, 佐藤 武敏2, 戸塚 真弓3, 黒沢 功4

Yoshiaki YAJIMA1, Takako SUGITA2, Taketoshi SATO2, Mayumi TOZUKA3, Isao KUROSAWA4

1黒沢病院付属ヘルスパーククリニック内科, 2黒沢病院付属ヘルスパーククリニック検査部, 3黒沢病院付属ヘルスパーククリニック健診部, 4黒沢病院付属ヘルスパーククリニック泌尿器科

1Department of Internal Medicine, Health Park Clinic Kurosawa, 2Clinical Laboratory, Health Park Clinic Kurosawa, 3Department of Health Screening, Health Park Clinic Kurosawa, 4Department of Urology, Health Park Clinic Kurosawa

キーワード :

著者らはdifferential THI搭載超音波装置を用いた新しい脂肪肝の診断基準を報告した1)が,この診断基準を用いて肝脂肪化例のALT値について検討した後に,軽度の肝脂肪化例をも完全に除外した“正常群”よりALTの正常値を再検討することにした.
【対象と方法】
当院の2009年度の健診受診者17069名より無作為に1000名を抽出し,下記の項目を除外して正常群を設定した.すなわち,①B,C型肝炎ウイルス陽性,②量にかかわらず晩酌の習慣,③薬剤の服用,④γGTP高値,⑤肝脂肪化例(軽症例を含む).用いた超音波装置は東芝のXARIO-XGで,5名の検査技師が撮影した静止画像を一人の超音波専門医が最終的に判定した.脂肪肝の超音波診断基準は肝腎コントラスト軽度を脂肪化(+),肝腎コントラスト中等度を脂肪化(++),肝血管不鮮明化や深部減衰を伴った場合は脂肪化(+++)とした.脂肪化(++)以上を脂肪肝とした.
【結果】
1)正常群のALTの分布と性差  上記の基準に該当する正常群は381名で,ALTの分布はほぼ正規性の分布となった.95パーセンタイルは 5.4〜29.4 IU/L と計算された.2)各脂肪化群のALTの分布  ヒストグラムの検討では,脂肪化が進行するにつれて次第にALT>30 IU/Lの症例が増加した.各群とも正規性分布から逸脱したALT高値例がみられたが,アルコール性肝障害,薬剤性肝障害,ウイルス性肝障害などの脂肪肝以外の病態が合併している可能性が考えられた.boxグラフでは中央値,平均値は脂肪化の進展とともに確実に高値となっていった(図).
【考察】
肝脂肪化例を除外した正常群よりALTの正常値は≦30 IU/L と推定され,日本消化器病学会肝機能研究会よりの勧告値と一致した.ALTの正常値が引き下げられた結果,超音波で診断される脂肪肝の約2/3が肝障害を示すこととなり,超音波診断との乖離が少なくなった.
文献
1)矢島義昭,ほか:Differential tissue harmonic imaging超音波診断装置による脂肪肝の所見:CT所見との対比による診断基準の再評価. Jpn J Med Ultrasonics 2010;37:587-92.