大嶋 聡子¹, 長沼 裕子², 石田 秀明³, 小丹 まゆみ¹, 伊藤 恵子⁴, 須田 亜衣子⁴

Satoko OOSHIMA¹, Hiroko NAGANUMA², Hideaki ISHIDA³, Mayumi KOTAN¹, Keiko ITOU⁴, Aiko SUDA⁴

¹市立横手病院検査科, ²市立横手病院消化器科, ³秋田赤十字病院超音波センター, ⁴仙北組合総合病院検査科

¹Department of Medical Laboratory, Yokote Municipal Hospital, ²Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, ³Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ⁴Department of Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
ドプラ法で門脈波形は，定常流とされているが，呼吸や心拍により小さな波のような起伏があることはよく知られている．我々は，今回，呼吸による波形の変化を除く，心拍による起伏が，肝静脈の波形や門脈に並走する肝動脈の波形とどのような関係があるのか，ドプラ波形が2箇所で同時に表示可能なdual Dopplerを用いて検討してみたので報告する．
【対象と方法】
対象は外来でdual Dopplerを施行した39例，男性23例，女性16例，平均年齢63歳．内訳はび漫性肝疾患のない正常肝34例，肝機能異常のない軽度脂肪肝5例である．方法は日立社製Preirusに搭載されているdual Doppler法を用い，一画面上に表示可能で測定しやすい部位として①右門脈と右肝静脈または中肝静脈，②右門脈と並走する右肝動脈の波形を，軽い吸気時に数秒間息止めをしてもらい表示し，それぞれの波形を検討した．門脈波形は便宜上，a）全く起伏のみられない平坦な波形を無相性，b）比較的起伏の小さいなだらかな山と小さな谷の部分がみられる波形を2相性，c）山の部分が2箇所以上ある波形を多相性とした．
【結果】
門脈波形が無相性は0例，2相性は20例，多相性は19例であった．門脈波形と肝静脈波形との関係は，2相性の場合は肝静脈波形の振幅が小さく，多相性の場合は大きいという特徴があった．門脈波形が多相性を示していたときは，肝静脈波形をちょうど上下に反転した形状とかなりの部分一致していた．門脈波形と肝動脈波形との関係は，門脈の一番流速の低い谷の部分が拍動血流の部分に一致しており，門脈のなだらかな山の部分がそのあとに続いていた．
【考察】
び慢性肝疾患を有さない場合，小さな起伏も含めると，全例に門脈波形の起伏が見られると考えられた．門脈波形のなだらかな起伏は心拍のリズムで繰り返され，門脈波形の一番低速の谷の部分は肝動脈波形の最高流速の部分に一致することが多いと考えられた．肝静脈波形の振幅が小さいとき，門脈波形が2相性になること，肝静脈波形の振幅が大きいとき，多相性になること，多相性の起伏が肝静脈波形を上下に反転した形にかなりの部分一致していること，などから門脈の起伏は肝静脈波形に多く影響を受けている可能性が考えられた．
【文献】
Abu-Yousef MM: Normal and respiratory variations of the hepatic and portal venous duplex Doppler waveforms with simultaneous electrocardiographic correlation. J Ultrasound Med 11:263-268, 1992.