Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管4

(S415)

大腸出血の診断における体外式腹部超音波の有用性

Efficacy of ultrasonography for diagnosis of colorectal bleeding

今村 祐志1, 畠 二郎1, 眞部 紀明1, 麓 由起子3, 岩井 美喜3, 中武 恵子3, 谷口 真由美3, 竹之内 陽子3, 高田 珠子4, 春間 賢2

Hiroshi IMAMURA1, Jiro HATA1, Noriaki MANABE1, Yukiko FUMOTO3, Miki IWAI3, Keiko NAKATAKE3, Mayumi TANIGUTI3, Youko TAKENOUTI3, Tamako TAKATA4, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学消化管内科学, 3川崎医科大学附属病院中央検査部, 4三菱三原病院内科

1clinical pathology and laboraotoly medicine, kawasaki medical school, 2gastroenterology, kawasaki medical school, 3clinical laboratory, kawasaki medical school hospital, 4internal medicine, mitubishi mihara hospital

キーワード :

【背景】
日常臨床において下部消化管出血を疑う症例を多く経験するが,緊急の大腸内視鏡は患者および術者の負担が大きい割には出血原因の確定が困難であることを経験する.体外式腹部超音波は簡便かつ非侵襲的であり,また消化管疾患に対する有用性が認識されてきている.下部消化管出血の診断における診断法の一つとなれば臨床的有用性が高いと考えられるが,その有用性を検討した報告は少ない.
【目的】
大腸出血の診断における体外式腹部超音波の有用性を検討する.
【方法】
2009年1月から2010年12月までに血便,下血を主訴に当院を受診して,腹部超音波および大腸内視鏡を施行した症例135名(男性58名,女性77名,12〜97才,平均57.9±20.8才)を対象とした.腹部超音波検査を他の検査に先駆けて試行し,大腸内視鏡は超音波検査に引き続き,あるいは後日前処置を施行したのちに行った.超音波装置は東芝AplioTM,3.5MHzコンベックスあるいは6MHz,7MHzリニアプローブを使用し,実質臓器観察後に前処置はせずに消化管の観察を行った.大腸内視鏡において活動的な出血を認めなくても,他の出血原因を認めず大腸憩室や痔核のみを認めた場合は大腸憩室,痔核をそれぞれ出血原因とした.大腸内視鏡診断を基準として超音波診断の正診率を検討した.
【結果】
大腸内視鏡では110例に出血原因を認めた.虚血性腸炎を31例に認め,超音波の正診率は83.9%(26例),細菌性腸炎4例は正診率100%(4例),炎症性腸疾患8例の正診率は75%(6例)と良好であったが,憩室20例は45%(9例),非特異性腸炎10例は10.0%(1例),癌14例(上行結腸癌2例,S状結腸癌3例,直腸癌9例)は28.6%(4例)であった.
【考察】
虚血性腸炎,細菌性腸炎や炎症性腸炎は腸管壁肥厚を伴うため超音波で良好な診断が可能であったが,憩室や非特異性腸炎などは壁の変化がわずかであるため診断が困難であったと考えらえた.癌のなかで特に直腸癌は22.2%(2例)と低い診断率であったが,直腸は比較的小さな病変でも血便等の症状をきたすこと,背側に存在しており膀胱に尿がたまっていないと観察が困難になりやすいことなどが関与していると考えられた.
【結語】
体外式腹部超音波は大腸出血の診断において有用であるが,大腸憩室出血など診断が困難な疾患や直腸など診断が困難な部位が存在することに注意する必要がある.