Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管4

(S415)

市中病院で経験した細菌性腸炎に対する超音波画像所見についての検討

Study of ultrasonography findings about bacterial colitis which experienced at a city hospital

福島 豊, 中野 勝行

Yutaka FUKUSHIMA, Katsuyuki NAKANO

東神戸病院放射線科

Department of Radiology, Higashikobe Hospital

キーワード :

【はじめに】
細菌性腸炎における超音波画像所見は,右側結腸や回腸末端を中心とする壁肥厚や拡張像が特徴的な画像所見とされており,さらに臨床症状や患者背景を考慮することで的確な画像診断を行うことができると考えられる.そこで今回,当院で経験した細菌性腸炎の超音波画像所見について検討したので報告する.
【対象】
2009年1月から2010年11月までに消化管症状をきたしたため腹部超音波検査(以下US)を施行し,便培養にて原因菌が検出された34例を対象とした.内訳はサルモネラ4例,カンピロバクター1例,病原性大腸菌17例,腸炎ビブリオ1例,エルシニア1例,エアロモナス3例,セレウス1例,黄色ブドウ球菌6例であった.
【方法】
上行,横行,下行,S状結腸に対し,肥厚(4mm≦)した腸管壁を計測した.回腸末端も同様に4mm以上を肥厚とし,回盲部周囲のリンパ節腫大の有無も検討した.装置は東芝Aprio XG SSA790Aの3.5〜8.0MHzのコンベックスおよびリニア型探触子を使用した.
【結果】
サルモネラ,病原性大腸菌,エアロモナス,カンピロバクターは腸管壁が上行結腸から下行結腸までの範囲で肥厚する傾向が認められ,特に上行結腸での肥厚径が平均10mm程度と高度であった.病原性大腸菌や黄色ブドウ球菌は,約半数で上行結腸から下行結腸までの肥厚と拡張を伴っており,また病原性大腸菌に関しては小腸の拡張も多く認められた.カンピロバクターおよびエルシニアは1症例のみの報告だが,それぞれに特徴的な所見が得られた.腸炎ビブリオとセレウスでは小腸の拡張を認め,セレウスでは上行結腸の著明な肥厚が認められた.
【考察】
USの所見上,腸管壁の肥厚や拡張は半数以上の症例で上行結腸から下行結腸に認め,S状結腸の変化は少なかった.特に上行結腸の肥厚は8割程度認められており,肥厚径も他部位と比較し高値であった.このことは細菌性腸炎が上行結腸を中心とした右側結腸型の病態であるという従来の報告と一致していると考えられた.なお一部の病原性腸炎および黄色ブドウ球菌は,腸管毒素産生型であるため腸管拡張が認められたと考えられた.
【結語】
今回の検討で,細菌性腸炎は右側結腸を中心とした壁肥厚や拡張が認められた.当院のような市中病院では下痢症などの消化器症状で来院する患者も多く,それらの診断・鑑別を行うためにもUSを積極的かつ速やかに行い,腸管の壁肥厚や拡張の評価を行っていくことが重要であると考えられた.