英文誌(2004-)
一般口演
消化器:消化管4
(S414)
大腸癌における術前の超音波検査の意義
Significance of preoperative ultrasound in colorectal cancer.
武藤 修一1, 3, 高橋 亜希2, 大西 俊介3, 武田 宏司4
Shuichi MUTO1, 3, Aki TAKAHASHI2, Shunsuke OONISHI3, Hiroshi TAKEDA4
1苫小牧市立病院消化器内科, 2苫小牧市立病院検査科, 3北海道大学大学院医学研究科消化器内科学, 4北海道大学薬学研究院医療薬学分野病態解析学研究室
1gastroenterology, Tomakomai city genaral hospital, 2Inspection department, Tomakomai city genaral hospital, 3Gastroenterology, Hokkaido University Graduate School of Medicine,, 4Pathophysiology and Therapeutics, Hokkaido University, Faculty of Pharmaceutical Sciences
キーワード :
【目的】
内視鏡検査で既に存在が明らかな大腸癌に対し,病変部をBモードによる超音波検査とソナゾイドRを用いた造影超音波検査を使用して,CTとの術前画像診断との比較と病理組織との関連性について検討した.
【方法】
当院において,平成20年1月から平成21年9月までに,大腸癌の術前検査として腹部超音波を施行した81症例のうち,原発巣が超音波検査で描出可能で,手術を施行した大腸癌68症例,68病変を対象とした.年齢は41歳〜93歳(平均70.4歳)で,性別は,男性40例,女性28例.組織型は,高分化管状腺癌(tub1)21例,中分化管状腺癌(tub2)35例,粘液癌(muc)4例,低分化腺癌(por)6例,印環細胞癌(sig)1例,内分泌細胞癌(ecc)1例であった.Bモードにおいて,大腸癌部の深達度と周囲リンパ節を確認し,Dukes分類を用い,A/B/Cにて評価し腹部CT検査と比較を行った.その後,ソナゾイドRを静注し,腫瘍が造影されるパターンを観察した.大腸の腫瘍内が造影されるパターンを腫瘍内部が全体に造影されるものをdiffuse patternとし,造影されない部分が一部でも認められたものをdefect patternとした.
【成績】
DukesAの診断能は超音波検査が腹部CT検査に勝っていた.DukesCについては,超音波検査は,感度53.8%特異度86.2%に比し,腹部CT検査は,感度69.2%特異度75.9%であった.Defect patternの群はdiffuse patternに比し,最大腫瘍径は有意に大きく,深達度も有意に深く浸潤していた.また組織型については,分化度の高い管状腺癌(tub1, tub2)はdiffuse patternが有意に多く,それ以外の組織型(por, sig, muc, ecc)はdefect patternを示すものが有意に多く認められた.CD34染色による血管密度の評価では, diffuse patternは3+を示すものが有意に多く,defect patternは2+または1+を示すものが有意に多く認められた.また,necrosisを認めないものはdiffuse patternを示すものが有意に多く,necrosisを認めるものはdefect patternを示すものが有意に多かった.造影パターンを決定することに関わる有意な因子を同定するため,多変量解析を行うと,血管密度, necrosisの有無,最大腫瘍径,v因子が有意な独立した因子として認められた.
【結論】
腫瘍組織内のnecrosisの存在は予後と関連することが報告されており,necrosisは術後再発の可能性や予後を推測するうえで重要な所見と考えられる.大腸癌症例の超音波検査を行う際には,Bモードに加え,大腸原発巣の評価と肝転移の有無を検索できるソナゾイドRを用いることで,術前に病期や悪性度や病期を予測する有用な検査である.