Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S413)

消化管GISTのリスク分類と超音波検査・超音波内視鏡検査所見との比較検討

Ultrasonographic Findings of Gastrointestinal Stromal Tumor(GIST)

若杉 聡1, 平田 信人1, 高橋 浩二2, 北浦 幸一2, 山崎 智子2, 小宮 雅明2, 草薙 洋3, 加納 宣康3, 成田 信4, 星 和栄4

Satoshi WAKASUGI1, Nobuto HIRATA1, Kouji TAKAHASHI2, Kouichi KITAURA2, Tomoko YAMAZAKI2, Masaaki KOMIYA2, Hiroshi KUSANAGI3, Nobuyasu KANOU3, Shin NARITA4, Kazue HOSHI4

1亀田総合病院消化器内科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3亀田総合病院外科, 4亀田総合病院病院病理科

1Division of Gastroenterology, Kameda Medical Center Hospital, 2Ultrasonograhy Room, Kameda Medical Center Hospital, 3Division of Surgery, Kameda Medical Center Hospital, 4Division of Pathology, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
消化管Gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)は消化管の間葉系腫瘍で最も多く,日常臨床でしばしば経験される.しかし,その良悪性の判断が難しい.再発の危険性の高い症例は細胞分裂が活発で,大きな腫瘍といわれているが,それ以外の症例でも,潜在的に悪性の可能性があるといわれている.そのため,近年は組織学的に良悪性に分類せず,腫瘍の転移,再発のリスクが高いか低いかで分類している.今回われわれは,GISTの細胞増殖能の指標であるMIB-1 index,壊死の有無,腫瘍径から分類した悪性リスクと,Yamadaらが報告した超音波内視鏡での筋原性腫瘍(現在のGISTが主体)の良悪性鑑別診断の指標を比較検討して,GISTの超音波検査・超音波内視鏡検査所見の再評価を行った.
【対象と方法】
2007年11月〜2010年10月の期間に当院で経験された消化管GISTで,超音波検査ないし超音波内視鏡検査で病変の評価が可能であった24例である.これらの症例について,Yamadaらの報告のごとく,悪性度の評価を行った.すなわち,①3㎝以上,②結節分葉状,③内部エコー不均一,④無エコー域,⑤潰瘍の5所見を悪性所見とし,1所見が陽性なら1点として点数化するものである.これをmalignant score(以下MS)とした.なお,体外式超音波検査での潰瘍の有無の診断は容易でない.潰瘍の超音波所見が得られなくても,内視鏡検査で潰瘍がある症例,内視鏡ができなくても臨床的に消化管出血が明らかな症例は潰瘍ありとした.病理組織の悪性リスクは,GIST診療ガイドラインの病理診断基準(2)に則って診断した.すなわちMIB-1 index<10%かつ腫瘍壊死なしの場合,5㎝以下を低リスク,5㎝から10㎝を中リスク,10㎝より大きい場合を高リスクとし,MIB-1 index10%以上または腫瘍壊死ありの場合は大きさにかかわらず高リスクとした.
【結果】
年齢は55歳〜80歳で,11例が男性で13例が女性であった.21例は胃GISTで,3例は小腸GISTであった.大きさは17mm〜145mmであった.低リスクと病理診断された症例は11例であった.これらのうち,MS0点の症例は2例,MS1点は4例,MS2点は4例,MS3点は1例,MS4点,5点は存在しなかった.中リスク症例と診断された症例は2例で,ともにMS3点であった.高リスクと診断された症例は11例で,MS0-1点およびMS5点は存在せず,MS2点が1例,MS3点が4例,MS4点が6例であった.
【考察】
Yamadaらのmalignant scoreの報告は,GISTの概念が明らかになる前の報告であり,胃の固有筋層由来と判断された症例は筋原性腫瘍(平滑筋腫,平滑筋肉腫)と診断されていた.その良性(平滑筋腫)と悪性(平滑筋肉腫)の鑑別としてYamadaらが報告したのがMSである.その後,免疫染色の検討から固有筋層由来の腫瘍の80%がCajalの介在細胞由来のであることが明らかになり,GISTと命名された.また,GISTはすべて潜在的に転移,再発のリスクを有していることも明らかになった.病理診断基準も,腫瘍の大きさ,転移の有無,核分裂数を基にした診断基準に加え,壊死,細胞増殖能(MIB-1 index)に基づいた基準も報告された.今回,われわれは,YamadaらのMSがGISTのリスク分類を反映するかを検討した.その結果,症例が少なく統計的な検討は困難だが,MSが高くなる程,病理学的なリスクも高くなる傾向にあることがわかり,YamadaらのMSが有用であることがわかった.今後も症例を重ねて検討してゆきたい.
【結語】
Yamadaらの報告した筋原性腫瘍のMalignant scoreはGISTのリスク分類を反映する指標として有用である.
【文献】
Yamada Y., Kida M., Sakaguchi T et al A study on myogenic tumor of UGI tract by EUS. Digest. Endosc.4;.396-408,1992