Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:胆道系

(S409)

体外式超音波による肝外胆管結石の描出能の検討

Ability of ultrasonography for the detection of extrahepatic bile duct stones

谷口 真由美1, 畠 二郎2, 竹之内 陽子1, 中武 恵子1, 岩井 美喜1, 麓 由起子1, 小島 健次1, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 春間 賢3

Mayumi TANIGUCHI1, Jiro HATA2, Yoko TAKENOUCHI1, Keiko NAKATAKE1, Miki IWAI1, Yukiko FUMOTO1, Kenji KOJIMA1, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学消化管内科学

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound ,Department of Clinical pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Gastroenterology,Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【目的】
過去の報告における体外式超音波(以下US)の肝外胆管結石の描出率は50%以下と低率である.そこで当院でのUSにおける肝外胆管結石の描出能およびCT,MRCP,ERCPに対するUSの診断能について検討した.
【対象】
2006年1月から2010年11月までに当院で内視鏡的乳頭切開術を施行し,かつ施術時に排石が確認された患者のうち,施術前の1ヶ月以内にUSが施行されていた106例(男性63例,女性43例,平均年齢74.7歳)を対象とした.
【方法】
検討項目は1.US,CT,MRCP,ERCPの肝外胆管結石の描出率,2.USの各年毎の肝外胆管結石の描出率,3.USで肝外胆管結石が指摘できなかった症例の検査目的,4.USで肝外胆管結石が指摘できなかった症例のUS所見(肝外胆管の拡張,胆嚢結石もしくは胆泥の有無)とした.機種は東芝社製SSA-700A,SSA-770A,SSA-790A,プローブは3.75MHzコンベックスプローブ,7.0MHz,6.0MHzリニアプローブを個々の条件に応じて適宜用いた.
【結果】
1.肝外胆管結石の描出率はUS 60.4%(106例中64例),CT 77.2%(57例中44例),MRCP 88.9%(18例中16例),ERCP 99.1%(106例中105例)であった.2.USの各年毎の描出率は2006年38.5%(13例中5例),2007年46.2%(13例中6例),2008年52.6%(19例中10例),2009年69.6%(23例中16例),2010年71.1%(38例中27例)であった.またUSで指摘し,CTで指摘できなかった症例は16.1%(31例中5例)存在した.3.USで指摘できなかった症例の検査目的は急性胆嚢炎疑い8例,心窩部痛精査4例,右季肋部痛精査4例,黄疸精査4例,肝胆道系酵素上昇原因精査3例,胆管炎疑い2例,総胆管結石疑い2例,腹痛精査2例,胆嚢摘出術術前精査2例,肝腫瘤精査2例,ビリルビン上昇原因精査1例,急性膵炎成因精査1例,胆石発作疑い1例,腹部スクリーニング2例,虫垂炎疑い1例,直腸癌術前精査1例,乳癌術後経過観察1例,肝細胞癌術後経過観察1例であり,胆道系の精査を主目的とする症例が多かった.4.USで肝外胆管結石が指摘できなかった症例のうち肝外胆管の拡張を認めた症例は11例(26.2%),胆嚢結石もしくは胆泥を認めた症例は25例(59.5%)であった.
【考察】
USの肝外胆管結石の描出率は他のモダリティと比較して低率であったが,当検査室における描出率は年々上昇傾向にあり,最近ではCTの描出率に近接していた.USで指摘し,CTでは指摘できなかった症例も16%存在し,X線陰性石と思われるこれらの症例に関してはUSが必須であると思われた.USで指摘できなかった症例の検査目的の大半は,臨床上も肝外胆管結石の存在が十分想定されるものであった.しかし,肝外胆管の拡張を認めた症例は30%以下と低く,胆嚢炎などの肝外胆管以外に目立つ所見が存在した場合,それを注視する一方で拡張のない胆管内の観察が不十分となっていた可能性が示唆された.また,USで指摘できなかった症例の約60%に胆嚢結石もしくは胆泥の合併を認めることから,これらの所見を認めた場合,肝外胆管の拡張の有無に関わらず胆管内を詳細に観察する必要があると考えられた.
【結語】
現状況ではUSの肝外胆管結石の描出率は他のモダリティに劣っていたが,機器の改良と検者の意識,技量の向上により描出率の上昇が期待できると考えられた.