小野寺 美緒¹, 黒田 英克¹, 三上 有里子^{1, 2}, 及川 隆喜¹, 諏訪部 章², 石田 秀明³, 滝川 康裕¹, 鈴木 一幸¹

Mio ONODERA¹, Hidekatsu KURODA¹, Yuriko MIKAMI^{1, 2}, Takayoshi OIKAWA¹, Akira SUWABE², Hideaki ISHIDA³, Yasuhiro TAKIKAWA¹, Kazuyuki SUZUKI¹

¹岩手医科大学内科学講座　消化器・肝臓内科分野, ²岩手医科大学臨床検査医学講座　中央臨床検査部, ³秋田赤十字病院超音波センター

¹Iwate Medical University School of Medicine, Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine,, ²Iwate Medical University School of Medicine, Department of Laboratory Medicine,, ³Akita Red Cross Hospital, Center of Diagnostic Ultrasound,

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【はじめに】
Virtual Touch Tissue Quantification（VTTQ）は，組組織弾性を非侵襲的に評価する技術である．今回我々は，劇症肝炎急性型に対し内科的集中治療を行い救命した一例を経験し，VTTQを用いて肝硬度を発症から回復までの全経過で経時的に観察し得たので報告する．
【症例】
52才の女性．平成22年7月2日腹痛，全身倦怠感が出現し，症状出現から4日後に意識障害が出現し当院入院となる．薬物歴，飲酒歴ならびに家族歴なし．指南力低下，傾眠傾向あり．眼球結膜に黄疸あり，肝・脾触知せず，肝濁音界の狭小化あり．T.Bil 4.0mg/dl, D/T 0.8, AST 6568 IU/ml, ALT 4911IU/ml, PT 5%, NH3 175μg/dl，肝炎ウイルスマーカー陰性，ANA＜40倍，AMA＜20倍．入院時の腹部CTでは肝萎縮 （liver volume 914ml）を認め，肝実質のびまん性X線吸収値低下を認めた．成因不明の劇症肝炎急性型と診断し，CT上Massive necrosisが疑われ，生体肝移植の適応を考えたが，適切なドナー候補は存在しなかった．人工肝補助療法としてPE，HDF，CHDFを9日間施行した．入院時，II 度の肝性脳症は，第2 病日にはⅠ度に改善し，第3病日には完全覚醒した．第3病日にT.Bilは10.2mg/dlまで上昇するも，その後低下し，第35病日にはT.Bilを含めた全ての肝機能検査値が正常内となった．第5病日のliver volumeは832mlと肝萎縮の進行を認めたが，第18病日に1090ml，第36病日に1140mlと回復を認めた．入院時に施行したカラードプラ検査では，右門脈枝のVmaxは7.4cm/s と低下していたが，第8病日に16.4cm/s，第22病日に20cm/sと改善を認めた．第1病日より4から6日毎にVTTQを施行した．使用した超音波診断装置はAcuson S2000（Siemens Medical Solutions）．右肋間走査で肝S5の表面から2cmの位置にROIを設定し，VTTQを用い5回Vs値を測定し，その平均値を測定結果とした．入院時Vs値は3.4±0.2 m/sで，第5病日には3.6±0.3 m/sと上昇したが，第18病日に2.3±0.2 m/s，第39病日に1.6±0.1 m/sと改善傾向を認め，第44病日に退院となる．
【考察】
本例は急性期のVs値は著明な高値を呈し，病態改善とともに低下を示した．急性肝不全における肝硬度上昇は広汎な壊死，炎症，浮腫，循環障害，など複雑な肝組織変化が本例のVs値に影響したと推測され，若干の文献考察を交えて報告する．