Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍 症例報告

(S406)

経過が追えた肝ペリオーシスの1例

A case of Peliosis hepatis

中野 卓二1, 橋本 千樹1, 川部 直人1, 原田 雅生1, 嶋﨑 宏明1, 西川 徹2, 杉山 博子2, 吉岡 健太郎1

Takuji NAKANO1, Senjyu HASHIMOTO1, Naoto KAWABE1, Masao HARATA1, Hiroaki SIMAZAKI1, Toru NISIKAWA2, Hiroko SUGIYAMA2, Kenntarou YOSIOKA1

1藤田保健衛生大学肝胆膵内科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部

1Depertment of Liver,Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University School of Medicine, 2Depertment of Clinical Laboratory Medicine, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【症例】
30歳代女性.
【既往歴】
10歳代後半からRaynaud現象,手指腫脹,咳嗽が出現していた.2003年3月,当院リウマチ膠原病内科にて混合性結合組織病(MCTD)と診断がつきPSL内服を開始.間質性肺炎や肺性心・二次性高血圧症も認め,2003年5月に在宅酸素療法を導入.
【現病歴】
2007年3月,腹痛,下痢のため施行された腹部USにて肝両葉に多発する高エコー腫瘤を指摘されたため,転移性肝腫瘍などを疑われ当科受診となった.
【検査所見】
Tbil0.7,GOT41,GPT38,LDH282,ALP557,γ-GTP311,コリンエステラーゼ4232,IgG2075,IgA685,IgM107,HBs抗原(-),HCV抗体(-),抗核抗体(+),抗RNP抗体88.9,抗SM抗体161.8,KL-61991,AFP2.2,CEA6.8,CA19-91.2
【画像所見】
腹部US:肝両葉に多発する高エコー腫瘤,脾腫を認めた.造影US(レボビスト):肝に多発する腫瘤は早期濃染されず,後期でも周囲と同様に染影された.造影US(ソナゾイド):肝に多発する腫瘤の一部にコットンウールの濃染を認め,血管腫が疑われた.腹部CT:単純CTでは肝に明らかな低吸収域は認めず,造影CTにて肝右葉を中心にわずかに低吸収で中心部が等濃度に増強される小さな腫瘤の多発を認めた.MRI:肝両葉にT1強調T2強調で低〜淡い高信号を呈し,脂肪抑制されない大小の腫瘤の多発を認めた.肝S6にT1強調で低信号,T2強調で高信号域をしめる結節を認め,FNHが疑われた.2007年7月,肝生検を施行.病理組織所見では,肝細胞は小型で索状構造は保たれており,散在性に偽腺管構造を認め,ペリオーシスを認めた.
【経過】
肝ペリオーシス(Peliosis hepatis)と診断され,ステロイド長期投与が原因と考えられたが,現疾患に対しては必要であり,経過観察となっていた.2009年12月,肝腫瘍増大が疑われ,腹部造影CTを施行.肝ペリオーシスの明らかな増加と増大を認めた.造影US(ソナゾイド)では,肝腫瘤の早期濃染は認めず,中心部から徐々に全体が染影され,後期相では明らかなdefectは認めなかった.肝ペリオーシスは,類洞の拡張と肝内に多発する血液の貯留腔を認める稀な疾患であり,原因は明らかではないが,蛋白同化ステロイドなどの薬物や慢性消耗性疾患に随伴して発症することが知られている.良性の疾患とされているが,腫瘍の増大により肝内出血や生命予後に影響する重篤な病態が生じる可能性もある疾患でもあり,肝ペリオーシスについて若干の文献的考察を加え報告する.