Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘤・その他

(S405)

肝嚢胞における外側音響陰影の発生機序について -computer simulation を中心に

Lateral shadow of hepatic cyst: comupter analysis

宇野 篤1, 石田 秀明2

Atsushi UNO1, Hideaki ISHIDA2

1秋田県成人病医療センター消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Gastroenterology, Akita Medical Center, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで超音波ビームの屈折による生じる各種アーチファクトをcomputer simulationを用いて解析し,その結果を報告してきた.しかし,その都度屈折の状態と(その結果生じる)表示の歪みとを混同する質問が多数あった.その主旨は,「超音波がたとえどのように屈折しても,必ずどこかに進み何かをとらえるはずであるので,画像上死角(表示が抜ける領域)が生ずるはずがない」,というものであった.そこで,今回は,屈折によるアーチファクトの代表である嚢胞の外側音響陰影を対象に,a)嚢胞近傍の超音波の屈折の状態と,b)それにより生じる,超音波画像上に表示される外側音響陰影の状態を比較検討したので報告する.
【基礎的検討(方法)】
1)観察対象物として肝嚢胞のほかに,肝嚢胞後方に仮想的な膜様の構造物が等間隔に存在するものと仮定する.これは画像の歪みの出現形態および程度を検討する際の指標となる.2)肝〜肝嚢胞〜仮想膜様構造物と近傍の超音波伝搬経路を計算し超音波ビームの軌跡を表示した.なお音速は肝 1540 m/s, 嚢胞 1450 m/s とし,仮想膜様対象物においてビームの屈折反射は起こらないものとした.3)超音波伝搬経路を元に,観察対象物が実際にはどのように装置に超音波画像として表示されるか計算する.4)最後に,計算済みのビームの軌跡と装置に表示される対象物を重ね合わせて表示し像を解釈・検討した.
【基礎的検討(結果)】
1)嚢胞後方の超音波ビームは外側部から内側に向かって収束する傾向にあり,その結果超音波ビームが存在しない領域(仮に無ビーム域とする)が嚢胞外側部から側〜下方に広がった.2)嚢胞後方の仮想膜様構造物は無ビーム域を含む嚢胞後方の領域において偏位して表示された.この領域内においては内側の領域が下向きに,外側の領域が上向きに偏位した.3)偏位して表示された領域とその外側との境界において表示上断裂を認めた.4)像の偏位・断裂の程度は嚢胞の後側方ほど大きかった.
【まとめ・考察】
今回の検討から,外側音響陰影は装置が対象物を表示する際の歪みによる「断裂」に由来することが理解できた.また「無ビーム域」=「外側音響陰影」として表示されてないことを再認識し検査にあたることが,像の正しい解釈につながるものと思われた.