Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘤・その他

(S404)

肝血管腫のソナゾイド造影超音波検査における診断能についての検討

Diagnosis of hepatic hemangioma using Sonazoid-enhanced ultrasonography

神沼 智江, 対馬 義人, 中野 祥子, 倉林 剛巳, 渋谷 圭, 天沼 誠, 遠藤 啓吾

Chie KAMINUMA, Yoshito TSUSHIMA, Sachiko NAKANO, Takemi KURABAYASHI, Kei SHIBUYA, Makoto AMANUMA, Keigo ENDO

群馬大学大学院医学系研究科放射線診断核医学

Department of Diagnostic Radiology and Nuclear Medicine, Gunma University Hospital

キーワード :

【目的】
ソナゾイドを用いた造影超音波検査は肝腫瘤の診断法の1つとして広く普及している.血管イメージングではCTやMRIでのダイナミック造影と異なり,造影効果の経時的変化をリアルタイムで観察することが出来るため,他の検査よりも鋭敏にその動態を捉えることが可能である.今回我々は,肝血管腫の診断におけるソナゾイド超音波検査の有用性について検討した.
【対象・方法】
2008年5月から2010年12月に当科でソナゾイド造影超音波検査を行った症例のうち,造影CTまたはMRIで肝血管腫と診断可能であった病変は22結節(21例)であった.これらを,通常のBモードで非典型的な所見を示した15病変,典型的所見を示した7病変にわけ,それぞれソナゾイド造影超音波所見を検討した.使用装置は,Aplio XV (TOSHIBA),LOGIQ 7 (GE),ACUSON S2000 (SIEMENS)である.Bモードにて上腹部のスクリーニングの後,病変について造影検査を行った.ソナゾイドは,原則として推奨使用量である,0.015ml/kgとし,急速静注後,直ちに生理食塩水10mlで後押しした(2ml/secの速度).撮影時には可能な限り吸気位にて息止めとしたが,一部の症例では自然呼吸下にて撮影し,少なくとも静注後60秒間連続的に撮影した.さらに約10分後よりクッパー相における所見を得た.
【結果】
非典型病変は低エコー8病変,等エコー1病変,不均一なエコー輝度6病変であり,大きさは8〜115mm(中央値26mm)であった.典型病変は明瞭な高エコー2病変,淡い高エコー5病変であり,大きさは10〜100mm(中央値15mm)であった.造影超音波所見は,辺縁から結節状に造影されるfill-in patternを認めたものを典型的な血管腫の造影所見と考えたが,10mm未満の小病変では早期に全体が濃染したものでも門脈相まで造影効果が明らかに周囲肝組織とほぼ同等に造影効果が持続していれば典型的な血管腫の造影所見とした.この結果,血管腫に典型的な所見を呈したものが非典型血管腫で13病変(87%),典型血管腫で3病変(43%; p=0.054, Fisher exact test)であった.造影超音波検査で典型的な所見が得られなかったものは,非典型血管腫では深部病変かつ脂肪肝や皮下脂肪のために良好な画像が得られなかったものが1病変,明らかな造影効果を指摘できず診断出来なかったものが1病変であった.典型血管腫ではBモードで強い高エコーであり造影効果が確認できなかったものが2病変,辺縁のみに造影効果があり非典型的であったものが1病変,描出不良な部位であり診断困難であったものが1病変であった.クッパー相の所見は,非典型血管腫では低エコーが13病変,等エコーが1病変,高エコーが1病変であり,典型血管腫では低エコーが3病変,高エコーが4病変であった.
【結論】
血管腫の診断において,非典型血管腫,典型血管腫ともにソナゾイド造影超音波検査は有用であるが,造影CTあるいはMRIと同様の造影所見を呈するとは限らず,かえって診断に混乱を来す症例がある.診断困難例については他のモダリティーの所見と合わせて総合的に判断する必要がある.