Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘤・その他

(S404)

“くも状エコー”に関する考察(第3報)

Intracystic cloud echoes : M-mode, 3D and contrast-findings

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 大山 葉子3, 花岡 明彦4, 上田 若奈4, 佐藤 美知子1, 小丹 まゆみ5, 大嶋 聡子5, 伊藤 恵子6, 須田 亜衣子6

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Youko OHYAMA3, Akihiko HANAOKA4, Wakana UEDA4, Michiko SATOU1, Mayumi KOTAN5, Satoko OOSHIMA5, Keiko ITOU6, Aiko SUDA6

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4日立メディコ超音波担当, 5市立横手病院検査科, 6仙北組合綜合病院臨床検査科

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Ultrasound System Group, Hitachi Medical Corporation, 5Department of Medical Laboratory, Yokote Municipal Hospital, 6Department of Medical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々は大きな肝嚢胞内の限局した範囲に出現し,ある拡がりをもつような淡いエコーの集合体で,心拍動様の動きを呈するアーチファクトを,空に浮かんで刻々と変わる雲の様子になぞらえて,“くも状エコー”とし,第80回学術集会で報告した1).さらに,くも状エコーは大きな肝嚢胞内以外に肝実質上でも観察され,繰り返し周波数(以下PRF)を下げることで消失する累積多重アーチファクトであることを第83回学術集会で報告した2).くも状エコーについて理解を深めるため更なる検討をし,知見を得たので報告する.
【対象と方法】
肝嚢胞内にくも状エコーが観察された19例を対象に,PRFを下げていくとくも状エコーが消失することを確認したのち,6例でM-modeの観察,5例で4Dプローブによる3D画像の観察,15例で肝の他病変の診断目的または肝嚢胞性腫瘍の鑑別目的に行った造影検査中,観察されたくも状エコーについて検討した.使用装置:日立Preirus,Avius,EUB8500,東芝Aplio XG,XV,Xario XG.造影剤ソナゾイド.
【結果】
a)M-modeを用いた観察では全例(6/6例)で,くも状エコーが心臓の動きと同期した動きを示した.b)4Dプローブによる観察では全例(5/5例)で,心拍の動きのあるくも状エコーは表示されなかった.PRFを下げると同様に位置変化し消失する静的なくも状エコーは表示された.c)造影検査を施行した全例(15/15例)にくも状エコーが観察された.くも状エコーはPRFを下げると消失し,嚢胞内病変,debrisなどとの鑑別が可能であった.
【まとめと考察】
PRFが高い場合,視野深度より深部にある構造物から反射した音は次のフレーム時に受信され,実際存在するよりも浅い位置に表示される.これが累積多重によるアーチファクトであり,くも状エコーはこの現象に相当する3).現在の超音波装置ではリアルタイム性を重視するためPRFを高くする傾向にあり,くも状エコーが出やすいため,このアーチファクトに関する理解を深めておくことが重要である.M-modeを用いると,心臓の動きと同期した信号が確認できる.M-modeは簡便でほとんどの装置で用いることが可能であり,くも状エコーの理解,鑑別診断に有用である.また,4Dプローブでの観察では,動きのある不安定な信号は排除され表示されないが,静的なくも状エコーの空間分布が確認でき,くも状エコーが超音波ビームのライン上で起こる累積多重であることの認識を確実にすることができた.造影検査中も,くも状エコーは観察されるため,debrisや嚢胞内の病変と混同しないように注意が必要である.視野深度を深くしてPRFを下げることで,くも状エコーは消失し,病変との鑑別が可能である.B-modeにおいては,装置により方法は異なるが,くも状エコーを軽減させるくふうが,現在の装置に装備されているが,造影modeにおいても,今後くも状エコーを軽減させる装置上の工夫が求められる.
【参考文献】
1.長沼裕子,他:超音波医学第80回学術集会プログラム講演抄録集, 34, 429, 2007. 2
2.長沼裕子,他:超音波医学第83回学術集会プログラム講演抄録集, 37, 387, 2010. 3
3.Naganuma H, Ishida H, Funaoka M, et al. Mobile echoes in liver cysts: a form of range-ambiguity artifact. J Clin Ultrasound 2010;38:475-9.