Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:装置

(S402)

携帯型超音波診断装置(GE:V scan)のアーチファクトの見え方について

Ultrasound artifacts in pocket-sized instrument

石田 秀明1, 小松田 智也1, 渡部 多佳子2, 八木澤 仁2, 古川 佳代子2, 大山 葉子3, 中島 裕子4, 幕田 倫子5, 大野 長行6, 細谷 由希子7

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Takako WATANABE2, Hitoshi YAGISAWA2, Kayoko FURUKAWA2, Youko OHYAMA3, Hiroko NAKAJIMA4, Michiko MAKUTA5, Nagayuki OHNO6, Yukiko HOSOYA7

1秋田赤十字病院内科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4市立横手病院内科, 5大原綜合病院臨床検査部, 6GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波本部, 7GEヘルスケア・ジャパン株式会社超音波担当

1Gastroenrerology, Akita Red Cross Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Clinical Laboratry, Akita Kumiai General Hospital, 4Internal Medicine, Yokote Municiapl Hospital, 5Clinical Laboratry, Ohara General Hospital, 6Ultrasound Sales Division, GE Healthcare Japan Corporation, 7Ultrasound System Group, GE Healthcare Japan Corporation

キーワード :

装置の小型化は超音波医学の大きな柱である.我々は過去の本学術集会で,各社の小型装置の使用経験について報告し,真の“携帯”には更なる小型化が,また真の“超音波装置”になるには更なる画質の向上が,必要と述べてきた.今回飛躍的に軽量(390g)した装置が市販されたので,下記の方法で,その画質について検討し若干の知見を得たので報告する.このような検討は超音波装置の将来像やこれからの超音波教育を考える上で重要と思われる.使用診断装置(V scan:GE Health Care社)プローブはセクタのみで固定式(周波数:3-4MHz).B-モードとカラードプラ機能を有するがFFT波形はとれない.M.I値は0.8に固定.携帯での使用を目的としており,1時間の充電で1時間の検査が可能で約2万(静止)像を記録可能,また動画に関しても2秒の保存は可能.
【対象と方法】
ハイエンド装置との“所見の見え方”に差異が無いか,という事を主眼に,下記の所見に関して,ハイエンド装置(東芝社製:AplioXG,GE Health Care社:LogiqE9(ともに周波数:3-4MHz)の所見をgold standardとして,1)1所見がさらに顕著,2)所見が同様に鮮明,3)所見は見えるがやや不鮮明,4)所見がわずかに見える程度,5)所見が全く認識できない,に分類した.対象所見の内訳は,(Bモード)a)肝嚢胞後方の増強効果(25),b)肝腫瘍後方の増強効果(15),c)肝のう胞の外側陰影(15),d)肝腫瘍後方の音響減衰(5)),e)結石後方の音響陰影(25),f)嚢胞のサイドローブ(10),g)嚢胞内部の累積多重(いわゆる“くも状”エコー)(5),(カラードプラ)h)結石後方のカラーモザイク(15).( )内は検討した件数.
【結果】
a)肝嚢胞後方の増強効果:1)0/25,2)0/25,3)15/25,4)10/25,5)0/25,b)肝腫瘍後方の増強効果:1)0/15,2)0/15,3)8/15,4)7/15,5)0/15,c)肝嚢胞の外側陰影:1)0/15,2)0/15,3)4/15,4)6/15,5)5/15,d)肝腫瘍後方の音響減衰:1)0/5, 2)0/5,3)1/5,4)3/5,5)1/5,e)結石後方の音響慰安影:1)0/25,2)3/25,3)16/25,4)6/25,5)0/25,f)嚢胞のサイドローブ:1)7/10,2)3/10,3)0/10,4)0/10,5)0/10,g)嚢胞内部の累積多重(“くも状”エコー):1)0/5,2)0/5,3)0/5,4)0/5,5)5/5,h)結石後方のカラーモザイク:1)0/15,2)0/15,3)12/15,4)3/15,5)0/15.
【まとめと考察】
携帯超音波の画質に関しては,始めから予想された様に,ハイエンド装置に比し画質がやや劣る事がこれらの所見の発現率をみても理解できる.これは,携帯超音波装置が空間分解能やドプラ感度が劣るためと考えられる.更にビームフォーマーなどの点での荒さがサイドローブがやや目立つ,という結果につながり,送受信の間隔が長い事が累積多重現象につながったと思われる.今回検討した装置は臨床的には十分に対応できる画質に達してはいるが,ハイエンド装置とは差異のある画質であり,実際の検査にあたってはその“違い”を考慮して用いるべきと思われる.そのためには普段から超音波検査を施行し装置による画質の差異の慣れておくべきで,それを含めたきめの細かい超音波教育が重要と思われた.