Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝新手法

(S399)

基本波造影超音波法(amplitude modulation法)-高周波プローブによる観察-

The advantages of amplitude modulation contrast-enhanced ultrasonography with high-frequency probe

長沼 裕子1, 石田 秀明2, 大山 葉子3, 佐藤 美知子1, 渡部 多佳子2, 大野 長行4, 細谷 由希子4, 幕田 倫子5

Hiroko NAGANUMA1, Hideaki ISHIDA2, Youko OHYAMA3, Michiko SATOU1, Takako WATANABE2, Nagayuki OHNO4, Yukiko HOSOYA4, Michiko MAKUTA5

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4GE横河メディカル株式会社超音波担当, 5大原綜合病院臨床検査科

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Ultrasound System Group, GE-Healthcare, 5Clinical Laboratory, Ohara General Hospital

キーワード :

【はじめに】
現在,造影超音波の手法で多く用いられているpulse inversion法(以下PI法)は,造影剤からの2次高調波成分を画像化したものであるが,amplitude modulation法(以下AM法)は造影剤からの基本波成分をamplitude modulation法を用いて表示した方法である.今回我々は,高周波プローブを用いた肝腫瘍の造影超音波所見をAM法,PI法で観察し,若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
対象は肝腫瘍31例(HCC6例,肝転移9例,肝血管腫14例,肝膿瘍2例),男性19例女性12例,平均年齢62歳.AM法,PI法での造影所見を超音波検査に習熟した医師2名と検査士1名で検討した.使用装置はGE Healthcare,LOGIQ E9,4-9MHzリニアプローブ.MI値0.25-0.31.造影剤はソナゾイドを使用.
【結果】
1)AM法のほうが動脈相での所見が明瞭28/31例(90%),PI法の方が明瞭3/31(10%)であった.2)全例でAM法のほうがPI法よりも視野範囲において均一な染影が得られた.3)AM法では全時相を通し背景の組織情報を消去することが可能であった.高エコー腫瘍は11症例,低エコー腫瘍は3症例,高エコー低エコーの混在した腫瘍は17症例であったが,高エコー部分のある腫瘍28症例ではAM法の方がPI法よりも腫瘍血管の観察が容易であった.4)後血管相での腫瘍辺縁の観察に関しては全例でAM法よりもPI法のほうが明瞭な所見が得られた.5)小さな肝転移巣においてre-perfusion imageを用いた診断ではAM法よりもPI法の方が明瞭な所見が得られた(2例).6)動脈-門脈シャントなど速い血流の存在する腫瘍の観察ではPI法の方が明瞭な所見が得られた(3例).
【考察】
高周波プローブを用いた観察は,浅い部分の観察が主体となり,また,高周波のため視野範囲の深い部分では減衰が強くなるが,造影検査においては,2次高調波は浅い部分では発生しづらく,また減衰が強いため,PI法では染影が弱くなる傾向にある.AM法は基本波を用いるため①浅部,深部での染影が良い,②基本波成分の受信のためプローブの帯域が2次高調波までカバーしなくてよい,という特徴があり,高周波プローブを用いた観察ではその利点がより強調される傾向にあると考えられる.また,高エコー腫瘍や,高エコー低エコーの混在する腫瘍では,組織情報を消去可能なAM法のほうが,腫瘍血管の観察に優れていた.しかし,AM法はPI法に比べて,空間分解能,時間分解能がやや劣るため,腫瘍辺縁の詳細な観察や,小さな腫瘍のvascularityの有無の判断,動脈ー門脈シャントなど速い血流の存在する腫瘍の観察はPI法のほうが適していた.高周波プローブを用いた肝腫瘍の造影超音波検査では初めに血管相をAM法で観察し,後血管相,re-perfusion image,腫瘍血管の詳細な再検討などをPI法で観察するというような使い分けをするとよいと考えられる.また,高周波プローブでAM法の良さがより引き立つためAM法に対応可能な高周波プローブが増えてくることが望まれる.