Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S395)

進行胃癌の深達度診断-体外式超音波検査とCTとの比較

Evaluation of ultrasnographic diagnosis of advanced gastric carcinoma compared to CT.

北浦 幸一1, 本間 善之1, 山崎 智子1, 伊藤 憲佐2, 若杉 聡3, 平田 信人3, 藤井 宏行3, 栃谷 四科子3, 星 和栄4, 成田 信4

Kouichi KITAURA1, Yosiyuki HONMA1, Tomoko YAMAZAKI1, Kensuke ITOU2, Satosi WAKASUGI3, Nobuto HIRATA3, Hiroyuki FUJII3, Sinako TOTITANI3, Kazuei HOSI4, Sin NARITA4

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院救命救急科, 3亀田総合病院消化器内科, 4亀田総合病院臨床病理科

1Division of ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of emergency, Kameda Medical Center Hospital, 3Division of gastroenterology, Kameda Medical Center Hospital, 4Division of clinicopathological, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回,我々は進行胃癌の深達度診断に体外式超音波検査の有用性を検討した.
【対象と方法】
2008年4月から2010年9月までに当院で内視鏡的に進行胃癌と診断され手術となった67例を対象とし,後ろ向きに検討した.正診率を比較するために術前の造影CT検査についても深達度を調べ,それぞれの結果を術後の病理診断と対比した.(1)超音波検査は全例で飲水法を施行し,原発病変の描出率を,部位別に検討した.描出可能であった原発病変は胃癌取り扱い規約に則った深達度診断を行った.(2)造影CT検査は飲水法などの特別な処置は行わずに,横断像でのみ診断を行った.臨床読影と,MPR再構成画像を含めた今回の検討用に行った深達度読影を対象とした.(3)病理診断は,免疫染色を含めた最終診断を以て深達度診断とした.ただし切除困難であった1症例は手術所見での深達度を用いた.
【結果】
超音波での原発病変の描出率は98.5%(66例/67例)で,描出できなかった1例は,穹窿部後壁で深達度ss-seの病変であった.描出可能であった症例の割合を部位別でみると,穹窿部で80.0%(4例/5例),体部で100%(25例/25例),前庭部で100%(37例/37例)であった.穹窿部で描出可能であった4例は,噴門部の病変であった.深達度診断で正診できた症例は44例で,正診率66.7%(44例/66例)であった.病理深達度別にみた正診率は,mpで58.8%(10例/17例),ss-seで71.1%(32例/45例),siで40.0%(2例/5例)で,深達度mpとsiで正診率が低かった.また,siで正診した2例は体位変換を用いて病変部と膵との位置関係の変化を観察しており,誤診した3例は体位変換を用いた観察を行っていなかった.一方,CT検査の原発病変の指摘率は77.6%(52例/67例)で,超音波での描出率(指摘率)より低かった.指摘できなかった症例の病変部位は,穹窿部で1例,体部で4例,前庭部で10例で,深達度は,mpで9例,ss-seで6例であった.描出可能であった症例の割合を部位別でみると,穹窿部で80.0%(4例/5例),体部で84.0%(21例/25例),前庭部で73.0%(27例/37例)であった.深達度診断の正診率は65.7%(44例/67例)で,超音波検査とほぼ同等であった.病理深達度別にみた正診率は,mpで41.2%(7例/17例),ss-seで77.8%(35例/45例),siで0%(0例/5例)であり,深達度siの正診症例はなかった.
【考察】
病変の描出率(指摘率)は,超音波検査の方が高かった.深達度診断の正診率には,差を認めなかったが,CT検査での深達度siの正診例はなかった.また,CT検査で3例が膵浸潤を疑われたが,超音波検査で体位変換を用いて観察することにより,病変部と膵との位置関係に変化を認め,膵浸潤なしと正診できた.深達度si,特に膵実質への直接浸潤を診断する方法として,他にMRI検査,超音波内視鏡検査などが有用と報告されているが,飲水法,体位変換法を併用した体外式超音波検査は患者負担が少なく,医療コスト的にも有益な方法であると考えられた.
【結語】
体外式超音波検査における原発病変の描出率は98.5%,深達度診断の正診率は66.7%であった.進行胃癌の膵浸潤の評価には,飲水法での体位変換を用いた体外式超音波検査が有用と思われた.