Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S393)

腹部超音波検査で胃食道逆流現象を検討した喘息性気管支炎および気管支喘息の6例

Six asthmatic bronchitis and bronchial ashtma cases investigated the association with gastoesophageal reflex with abdominal ultrasonography

藤井 喜充1, 木野 稔1, 佐藤 正人2

Yoshimitsu FUJII1, Minoru KINO1, Masato SATO2

1中野こども病院小児科, 2北野病院小児外科

1Pediatrics, Nakano Childrens’ Hospital, 2Pediatric Surgery, Kitano Hospital

キーワード :

【目的】
乳幼児の喘息性気管支炎および気管支喘息(以下:喘息)は胃食道逆流現象(gastroesophageal reflex 以下:GER)との関連が推察されており,pHモニターを用いた検討もなされてきた.しかし一般小児科診療で普及しているとは言い難く,簡便な検査ツールが望まれる.我々の施設では臨床症状的にGERが喘息の原因となっていると疑われる症例に腹部超音波検査を施行し,逆流の有無を確認している.動画保存され,後方視的に詳細な検討が可能であった6例のうち2例にpHモニターを施行することができたので,超音波検査の所見を再検討し,pHモニターの替りに成り得るのかを考察したので報告する.
【対象】
2009年1月からの1年間に当院に喘息の診断で入院し,1日2回以上の嘔吐が入院中にみられた男児1例女児5例(最小4月齢最大18月齢:中央値8月齢).全例に腹部超音波検査と胸部X線写真が施行され,2例にpHモニター検査が施行された.
【方法】
腹部超音波検査は東芝Aplio50を用い,上腹部縦断像で食道を大動脈前面にBモード縦断像で描出した.連続10分以上観察し,呑気および哺乳時の胃内容物の逆流の有無と,安静時の食道内腔の内容物の有無を検討した.
【結果】
胸部X線写真では1例に明らかな誤嚥性肺炎像を認めた.腹部超音波検査では6例全例に,呑気時および哺乳時の胃内容物の逆流を認めた.安静時食道内腔に内容物停留が確認されたのは1例であったが,誤嚥性肺炎像を胸部X線写真で認めた症例とは異なっていた.pHモニターは2例に施行され,うち1例は安静時食道内腔に内容物停留が認められた症例であった.pHモニターが施行された2例を呈示する.(症例1)5カ月の女児.在胎38週,2365gで出生した.生来喘鳴を反復していたが,急性気管支肺炎と気管支喘息の治療目的で入院となった.胸部X線写真上は明らかな誤嚥性肺炎像は認めなかった.原因精査のため腹部超音波検査が施行され,呑気および哺乳時に食道内容物が胃内に通過した直後に少量の逆流を認めた.しかし10分の観察では安静時には逆流および食道内腔に内容物の停留を認めなかった.下部食道括約筋長は8mmであった.pHモニターを用いた全計測時間に対するpH<4.0の時間の割合(pHインデックス)は0%であった.(症例2)8ヵ月の女児.在胎38週,2650g,帝王切開で出生した.生来喘鳴を反復していた.胃腸炎に伴う痙攣のため当院入院となり,喘鳴の精査目的のために胸部X線写真上は明らかな誤嚥性肺炎像は認めなかった.喘鳴の原因精査のため,腹部超音波検査が施行された.呑気および哺乳時には食道胃接合部で胃内容物がto and fro状態となっており,安静時にも食道内腔に内容物の停留を認めた.下部食道括約筋長は7mmであった.pHインデックスは19.2%であった.
【考察・結論】
症例1と2の超音波所見の違いは安静時の食道内胃内容物が停留の有無であるが,これは呑気や嚥下とは無関係に一過性に下部食道括約筋が不適切に弛緩するtransient lower esophageal sphincter relaxations(TLRSRs)をとらえ,pHインデックスの差としても確認できたと推察している.呑気および哺乳時の逆流はGERとは無関係か,喘息を引き起こす程の影響力はない可能性がある.超音波で小児の喘息との関連が推察されるGERを評価する際には,呑気および哺乳時の食道内容物通過直後の逆流を過大評価しないよう注意が必要である.