Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S393)

ストレイン法を用いた頚部食道運動機能評価

Evaluation of Swallowing Function Using Ultrasound Diagnostic MethodsWith Tissue Doppler image

筒井 英明1, 畠 二郎2, 眞部 紀明2, 石井 学1, 今村 祐志2, 山下 直人3, 鎌田 智有1, 楠 裕明3, 春間 賢1

Hideaki TSUTSUI1, Jiro HATA2, Noriaki MANABE2, Manabu ISHII1, Hiroshi IMAMURA2, Noto YAMASHITA3, Tomoari KAMATA1, Hiroaki KUSUNOKI3, Ken HARUMA1

1川崎医科大学消化管内科学, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学総合臨床医学

1Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 2Endoscopy and Ultrasound, Kawasaki Medical School, 3General Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景と目的】
一般的な嚥下機能評価法として嚥下造影検査(以下VF)が用いられているが,検査設備,被爆などの制約がある.超音波検査は頚部領域における非侵襲的かつ簡便でリアルタイムな画像検査法である.また循環器領域において組織ドプラ法(Tissue Doppler Imaging,以下TDI)はその有用性が高く評価されているが,同手法を食道運動機能評価に応用した報告は無い.今回超音波装置による組織ドプラ法を頸部食道運動機能評価に応用し,その有用性を検討した.
【対象】
健常者35名(31.2±6.7歳,男性/女性:25例/10例)対象者として,咽喉頭異常感症を主訴し食道内圧検査において嚥下圧の低下を認めた6名(72.1±6.1歳,男性/女性:5例/1例)
【方法】
使用機種は東芝SSA-790A,プローブは8MHzリニアである.被検者は坐位とし,輪状咽頭筋の尾側端から約1cmの部位における頚部食道短軸像を描出し測定部位とした.約5ccのゼリーを5回嚥下する際の頸部食道運動をTDIにより観察した.画像はraw dataとして機器のメモリに保存し,機器内臓の解析ソフトで画像解析を行った.頸部食道壁運動の指標として,縦軸を速度,横軸を時間とするvelocityにおけて,速度波形の陽性波のpeak値を弛緩速度,陰性波のpeak値を収縮速度,陽性波のpeak値までの時間をacceleration time,陽性波の間隔を弛緩時間,陰性波の間隔を収縮時間とした.また縦軸を移動距離,横軸を時間とするdisplacementにおけて,移動距離のpeak値を最大移動距離とした.
【結果】
全例検査に伴う合併症はなく,頸部食道運動の定量的評価が可能であった.弛緩速度が30.1±7.6 (mm/s),収縮速度が28.8±8.2 (mm/s),acceleration timeが218±42 (m/s),弛緩時間が525±127 (ms),収縮時間が422±218 (ms),最大移動距離が4.8±1.2 (mm)であった.また,健常者と比較し,食道内圧検査において嚥下圧の低下を認めた対象者において,acceleration time,弛緩速度および収縮速度の低下が認められた (p<0.05).その他の所見として,測定部位である頚部食道短軸像が健常者と比較し下方に認め,また分割嚥下が認められた.
【結語】
TDIを用いた頚部食道運動機能測定により,頸部食道運動機能が従来法にない観点から定量的に評価可能であった.また今後,反復唾液飲みテスト(RSST)や水飲みテストなどと同様にスクリーニング検査の嚥下評価として有用と思われた.