Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:膵2

(S392)

膵管癌の進展度診断における超音波検査・超音波内視鏡検査の位置づけ-CTとの比較-

Effectiveness of US and EUS in staging of pancreatic ductal carcinoma.

若杉 聡1, 平田 信人1, 神作 慎也2, 長谷川 貴士2, 押田 安弘2, 岩本 光生2, 山村 和博2, 荒井 健一2, 加納 宣康3, 星 和栄4

Satoshi WAKASUGI1, Nobuto HIRATA1, Shinnya KANSAKU2, Takashi HASEGAWA2, Yasuhiro OSHIDA2, Mitsuo IWAMOTO2, Kazuhiro YAMAMURA2, Kennichi ARAI2, Nobuyasu KANOU3, Kazue HOSHI4

1亀田総合病院消化器内科, 2亀田総合病院超音波検査室, 3亀田総合病院外科, 4亀田総合病院病院病理

1Division of Gastroenterology, Kameda Medical Center Hospital, 2Ultrasonography Room, Kameda Medical Center Hospital, 3Division of Surgery, Kameda Medical Center Hospital, 4Division of Pathology, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査(以下US)・超音波内視鏡検査(以下EUS)は,CTより空間分解能が高い.また,体位変換による画像の評価が容易にできる点も大きな利点である.しかし,その事実を知った上で検査をする者が少なく,超音波検査の利点を発揮できないまま検査が行われているのが現状である.今回,われわれは,膵管癌の進展度診断を超音波検査・超音波内視鏡検査で行い,CT,病理組織診断と比較することで,その有用性と臨床上の位置づけを検討した.
【対象と方法】
2007年9月から2010年9月に当院で膵管癌の診療を受けた84例である.これらに対し,膵癌取扱い規約に則り,USによる進展度診断を試みた.CTでも同様に進展度診断を試み,両者の一致率を検討した.手術が行われた12例において,US,EUS,CT,病理診断を比較検討し,それぞれの有用性,位置づけについて考察した.進展度診断は後方浸潤(RP),前方浸潤(S),十二指腸浸潤(DU),膵内胆管浸潤(CH),門脈浸潤(PV),動脈浸潤(A),リンパ節転移(N),肝転移(H),腹膜播種(P)について検討した.RP,Sについては,病変部が膵外に突出している所見,膵表面での病変の輪郭が不整である所見のいずれかで浸潤ありとした.A,PV浸潤は,脈管が病変部で狭小化している所見,輪郭不整な所見,壁の高エコーが不明瞭な所見のいずれかをもって浸潤ありとした.リンパ節転移については,長径10㎜以上の腫大リンパ節を転移ありとしたが,病変近傍で通常みられないリンパ節を認めたときは,10㎜未満でも転移ありとした.腹膜播種は,腹水または腹膜の結節の有無で診断した.CT検査は5mmスライスまたは7mmスライスの水平断像を基本とし,必要に応じてvolume dataの再構成画像も参考に診断した.
【結果】
RPは66例/84例(78%)でUSとCTで一致した.以下S62例/84例(74%),A60例/84例(71%),PV72例/84例(86%),CH71例/84例(85%),DU61例/84%(73%),N56例/84例(67%),H81例/84例(96%),P71例/84例(85%)であった.USとCTとの一致率は67%〜96%であった.病理組織を指標にUS,CT,EUSの進展度診断を比較したところ,手術例12例でRpは7例(58%)がCTで正確に診断,USでは8例(67%),EUSでは6例(50%)が正確に診断された.以下SはCT11例(92%),US11例(92%),EUS9例(75%),PVはCT10例(83%),US10例(83%),EUS11例(92%),AはCT10例(83%),US11例(92%),EUS11例(92%),CHはCT9例(75%),US12例(100%),EUS10例(83%)で,DUはCT8例(67%),US7例(58%),EUS11例(92%),NはCT5例(41%),US8例(67%),EUS7例(58%)で正確に診断された.
【考察】
CTとUSは進展度診断の不一致例も多いが,手術標本と比較すると,USがCTに勝るとも劣らず,膵管癌の進展度診断に有用であると思われ,今後CTとともに積極的に使用すべきである.EUSは,RP,Sの診断ではCT,USに劣っていた.膵全体から見た病変の範囲の把握が困難なことがあるためと考えられた.しかし,脈管浸潤の評価,十二指腸浸潤の評価には有用であり,CT,USで判断に迷う場合はEUSが有用と考えた.EUSは他の検査とくらべて膵管癌の進展度診断に有用であるという報告が多いが,患者に与える苦痛が大きい.当院では塩酸ペチジン35mgとミダゾラム2mgを使用して,EUSの苦痛軽減に効果をあげているが,EUSはCTと体外式超音波検査で手術の適応の可能性がある症例に限るべきと思われる.
【結語】
膵管癌の進展度診断において超音波検査は有用で,CTに勝るともおとらない.超音波内視鏡検査は苦痛のある検査であるため,CT,USで手術を考慮すべき症例に限っておこなうべきと思われる.