Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:膵2

(S390)

膵嚢胞性病変術前超音波診断困難例の検討

Preoperative ultrasonographic evaluation of cystic lesion of the pancreas

宇野 耕治

Koji UNO

京都第二赤十字病院消化器科

Department of Gastroenterology, Kyoto Second Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
膵嚢胞性病変の診断能も向上しつつあるが,未だなお画像検査での診断困難例が存在する.今回は,画像診断が困難であった膵嚢胞性病変について超音波内視鏡(EUS)を中心とした超音波診断の観点より検討する.
【対象と方法】
2008〜2010年に当院で外科的切除を施行した膵嚢胞性病変24例のうちEUSを中心とした術前画像診断と術後の病理診断結果の不一致例あるいは術前画像診断困難例は9例であった.これらの症例を対象とし,術前後診断不一致あるいは術前診断困難であった原因につき検討した.対象症例の性別は男性3例,女性6例,平均年齢58.6歳(30-84歳),病変の部位は膵頭部2例,膵体部2例,膵尾部5例,大きさは15〜65mm(平均36mm),術後病理診断の内訳は膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)3例,粘液性嚢胞腺腫(MCA),漿液性嚢胞腺腫(SCA),neuroendocrine tumor(NET),Solid-psudopapillary neoplasm(SPN),dermoid cyst,異所性脾が各1例であった.
【結果と考察】
〔症例1:IPMC〕70歳代男性,膵尾部病変,55mm大.辺縁部にわずかな嚢胞状変化を認め,石灰化を伴う低エコー腫瘤でIPMCも鑑別診断に挙がるものの術前診断が困難であった.〔症例2,3:IPMC〕30歳代女性,膵尾部病変,20mm大及び60歳代女性,膵体部病変,23mm大.主膵管との交通を有し,壁在結節を伴う嚢胞性病変でcyst-by-cystの所見は指摘できず,cyst-in-cyst様所見を認めたため粘液性嚢胞腫瘍(MCN)と膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の鑑別診断が困難であった.〔症例4:MCA〕50歳代女性,膵尾部病変,15mm大.間欠的腹痛を伴い増大・縮小を繰り返す嚢胞性病変で,主膵管と交通を有し,壁在結節を伴うcyst-in-cyst様所見を認めた.仮性嚢胞とMCNの鑑別診断が困難であった.〔症例5:SCA〕80歳代女性,膵体部病変,33mm大.増大傾向を示すcyst-by-cyst様多房性嚢胞で,主膵管との交通は認めず,部分的な実質性変化あるいはmicro-cyst集簇様所見を認めた.Macrocystic typeのSCNも疑われたが,IPMCの可能性が否定できず手術を施行した.〔症例6:NET〕60歳代男性,膵頭部病変,55mm大.増大傾向を示す多血性腫瘤で,高低エコーが混在し,microcyst集簇様所見も疑われた.漿液性嚢胞腫瘍(SCN),NET等の鑑別が困難であった.〔症例7:SPN〕30歳代女性,膵頭部病変,27mm大.体尾部主膵管拡張を伴う内部が低エコーで不均一な多血性腫瘤であったが,嚢胞状変化は不明瞭であった.NETやSPN等の鑑別が困難であった.〔症例8:dermoid cyst〕60歳代男性,膵尾部病変,65mm大.無エコー部・低エコー部・低高エコー部が併存し,造影CTでは壁在結節伴う乏血性の多房性嚢胞で,IPMN等の可能性を考えるものの診断困難であった.〔症例9:異所性脾〕40歳代女性,膵尾部病変,28mm大.増大傾向を示す単房性嚢胞性病変で,内部に部分的なエコーレベル上昇部を伴い,造影CTでは被膜様所見を認めた.MCNを疑ったが,切除後の病理診断は,epidermal cystを伴う異所性脾であった.以上の術前後診断不一致・術前診断困難例は,典型的所見を欠く症例や多彩な所見を呈する症例のほか,稀な疾患であった.
【結論】
膵嚢胞性病変の診断時には,非典型例や頻度の低い疾患も念頭に置く必要がある.