平松 武¹, 廣岡 芳樹², 伊藤 彰浩¹, 川嶋 啓揮¹, 大野 栄三郎², 松原 浩¹, 伊藤 裕也¹, 中村 陽介², 後藤 秀実^{1, 2}

Takeshi HIRAMATU¹, Yoshiki HIROOKA², Akihiro ITOH¹, Hiroki KAWASHIMA¹, Eizaburou OHNO², Hiroshi MATUBARA¹, Yuya ITOH¹, Yosuke NAKAMURA², Hidemi GOTO^{1, 2}

¹名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, ²名古屋大学医学部付属病院光学医療診療部

¹Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduste School of Medicine, ²Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【背景】
膵漿液性嚢胞腫瘍（SCN）は基本的に良性腫瘍で経過観察されることが多いが，様々な形態を示すこともあり同じ多血性の膵内分泌腫瘍（PET）と鑑別困難な症例も存在する．
【目的】
非典型的な画像所見を呈した膵漿液性嚢胞腺腫（SCA）の超音波内視鏡（EUS）所見を検討すること．
【対象】
2002年4月から2010年12月までに当院にてSCNと診断した20例中，他疾患と鑑別を要し，外科的切除によりSCAと最終診断した3例．内訳は男性1例，女性2例．平均年齢57.3歳（45歳〜68歳）．平均腫瘍径18.3mm（10mm〜25mm）．
【方法】
超音波内視鏡および観測装置は，Olympus社製GF-UE260-AL5とAloka社製Prosound α-10，またはPentax社製EG-3630UR/EG-3670URKと日立メディコ社製EUB-8500/HV900を使用した．B-modeで病変部を評価（Plain EUS）した後，経静脈的に超音波造影剤（2006年12月まではLevovist^®（バイエル薬品株式会社）をそれ以降はSonazoid^®（第一製薬株式会社）を投与して，投与後1分後，3分後，5分後Color-Doppler mode（CD）での病変部の血行動態を評価した（CE-EUS）．Plain EUSおよびCE-EUSにおける画像所見を評価し，EUSによる鑑別診断の可能性について検討した．また，CE-EUS所見については，既報の42自験例による膵内分泌腫瘍（PET）とも比較検討した．なお，Sonazoid^®の適応外使用は当院のIRBの許可を得ており，十分なインフォームドコンセントのもと実施している．
【結果】
症例1は膵体部18mmの肥厚した隔壁を有する多房性嚢胞性腫瘍の像を呈し，粘液性嚢胞性腫瘍との鑑別が困難であった．CE-EUSでは隔壁内に血流シグナルを認めた．残りの2例は側方陰影を伴う高エコー充実性腫瘍として描出され，後方エコーの増強も伴っていた．CE-EUSでは，全体に比較的均一な血流シグナルを造影直後，3分後，5分後に認め，PETと同様の血行動態を示した．
【結語】
非典型的な画像所見を呈するSCNもPlain EUSとCE-EUSの組み合わせにより鑑別診断しうる可能性が示唆された．