Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:膵1

(S388)

体位変換によって膵は動くか?

How do the pancreatic tumors migrate with posture conversion in ultrasonography ?

松田 正道1, 渡邊 五朗1, 橋本 雅司1, 竹内 和男2

Masamichi MATSUDA1, Goro WATANABE1, Masaji HASHIMOTO1, Kazuo TAKEUCHI2

1虎の門病院消化器外科, 2虎の門病院消化器科

1Surgery, Toranomon Hospital, 2Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
鶴岡らは腹部超音波検査(以下US)において,右側臥位・左季肋部横走査により膵体尾部の描出能が向上すると報告した1).経験的にも仰臥位から右側臥位への体位変換により,膵体尾部の病変が正中方向へと移動し描出しやすくなることがある.確かに膵体尾部背側の癒合筋膜(Toldt膵後筋膜)と左腎前筋膜の間には疎な結合織が存在するのみであるが,開腹下に膵体尾部を受動する外科医としては,体位変換のみで膵と左腎の相対関係が変化する(ずれる)とは考えにくい.本研究は,USで確認された膵の移動が癌の後方組織浸潤(RP)判定の拠り所となりうるか,また体位変換によって膵がどのようにどれだけ移動するのか,客観的に評価することを目的とした.
【対象および方法】
対象は,仰臥位から右側臥位への体位変換を行うことにより,心窩部横走査によるUS像で移動が確認された膵体尾部腫瘍8例である.検査の同意を得た上で,仰臥位と右側臥位でCTを撮影し,各体位における椎体・腫瘍間距離を測定し,体位変換に伴う腹側・側方・頭尾側方向への変位距離を求めた.また切除検体の病理組織像と対比した.超音波診断装置は東芝製Aplioで,探触子は3.75MHz腹部用コンベックスタイプを用いた.CTはMulti Detector-row CT (MDCT)を用い,5mmスライスで再構成を行った.
【結果】
切除の結果4例が浸潤性膵管癌で,全例RP陽性かつ膵外神経叢浸潤(PL)陽性であった.他は漿液性嚢胞腺腫(SCN),粘液性嚢胞腺腫(MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),Solid-pseudopapillary neoplasm (SPN)が各1例であった.仰臥位から右側臥位への体位変換によりCT上病変は,右側へ13〜48mm(平均23mm),腹側へ3〜29mm(平均15mm),足方へ-30〜35mm(平均16mm)移動した.
【考察】
RP・PL陽性の浸潤性膵管癌においても,体位変換でUS上腫瘍の移動が認められたことより,USでの膵可動の有無を膵癌におけるRP判定の拠り所とすることは出来ないと考えられた.CT所見からは,体位変換による膵体尾部・左腎間の相対関係に変化は認められず,膵体尾部が後腹膜臓器ごと右側・腹側・側方へと15〜20mm程度移動することが確認された.これにより膵体尾部の描出深度が浅くなり,また消化管との相対関係が変化することと相まって,US上は膵体尾部の描出能が向上するものと考えられた.
1)鶴岡尚志, 金田智, 竹内和男, ほか. 体位変換による膵体尾部病変描出能の検討. 超音波検査技術 2005;30(1):4-8.