Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:健診・その他

(S385)

腹部超音波検診30年の成果と事後管理の重要性

Results of thirty years screening for abdomen by ultrasonography and the importance of follow up systems.

鶴田 和美1, 三原 修一2, 木場 博幸1, 田中 信次1, 平尾 真一1, 光永 雅美1, 阪本 美紀1, 川口 哲2, 大竹 宏治2

Kazumi TSURUTA1, Shuichi MIHARA2, Hiroyuki KOBA1, Shinji TANAKA1, Shinichi HIRAO1, Masami MITSUNAGA1, Miki SAKAMOTO1, Tetsu KAWAGUCHI2, Koji OTAKE2

1日本赤十字社熊本健康管理センター画像診断課, 2日本赤十字社熊本健康管理センター内科

1Department of image diagnosis, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center, 2Department of internal medicine, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center

キーワード :

我々は,1983年8月から人間ドックおよび地域・職域集検において腹部超音波検診を行ってきた.今回,発見された悪性疾患症例を分析し,その成果を紹介するとともに,事後管理の重要性について報告する.
【方法】
我々は現在,施設内では装置9台,集団検診では専用の超音波検診車10台(装置11台)を用いて腹部超音波検診を行っている.スクリーニングは全て技師が行い,全員が超音波検査士の取得をノルマとしている(現在消化器35名,体表24名,泌尿器18名).画像記録はすべて独自のファイリングシステムで行っており,前回との比較読影も瞬時に可能である.装置1台あたりの処理人数は,1時間当たり10名程度が基本である.年間の受診者数は約8万人(1日当り400〜500人)である.
【成績】
2008年3月までの25年間の受診者数は延べ1,703,350人(実質387,725人)で,肝細胞癌393例,胆嚢癌165例,膵臓癌151例,腎細胞癌389例,膀胱癌178例など1,678例(対延べ受診者発見率0.10%,対実質受診者発見率0.43%)の悪性疾患が発見された.その他,肝血管肉腫,胆管嚢胞腺癌,腎カルチノイド,腎悪性リンパ腫,副腎癌など稀有な悪性疾患も多数発見されている.切除例は肝細胞癌87例(22.1%),胆嚢癌149例(90.3%),膵臓癌79例(52.3%),腎細胞癌383例(98.5%),膀胱癌172例(96.6%)など,転移性癌および白血病を除く1,569例中1,034例(65.9%)であった.切除例の10年生存率(Kaplan-Meier法)は肝細胞癌44.9%,胆嚢癌82.2%,膵臓癌39.4%,腎細胞癌97.4%,膀胱癌98.0%であった.肝細胞癌ではTACE・PEIT・MCT・RFAによる治療例の10年生存率も13.8%であった.膵臓癌では,浸潤性膵管癌の10年生存率は26.2%,その他の癌では67.7%と良好であった.また,全悪性疾患切除例の10年生存率は82.0%,25年生存率は80.0%と良好であった.特に,胆嚢癌,腎細胞癌,膀胱癌は早期発見例が多く,予後も良好であり,超音波検診が特に有用な癌と思われた.
【事後管理の重要性】
我々は,全ての検診において事後管理の確立と強化に努めてきた.腹部超音波検診における25年間の要精検率は1.76%,精検受診率は83.5%であった.がん検診の精検受診率をさらに強化する目的で,平成21年度からは,まず人間ドックにおいて,癌が疑われる症例および緊急を要する症例は検診受診当日に精検医療機関の受診予約を行う医療連携システムを確立した.平成21年度に,このシステムによる紹介者(要精検者)は230例,精検受診者数225例(受診率97.8%),癌症例99例(受診者の44.0%),癌疑い症例16例(受診者の7.1%)であった.腹部超音波検査では紹介者数78例,精検受診者数77例(98.7%),癌症例33例(受診者の42.9%),癌疑い症例5例(受診者の6.5%)であった.効果的ながん検診を行うためには,事後管理の強化が不可欠である.
【まとめ】
腹部超音波検診は,消化器癌,腎泌尿器癌など腹部諸臓器の癌の早期発見に有用であり,さらに普及していくことが望まれる.また,質の高い検診を普及し,その評価を高めていくためには,精度管理,特に事後管理の精度向上が不可欠である.