Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:健診・その他

(S385)

人間ドック腹部超音波検査における要精密検査者の追跡調査

Outcome of screening ultrasonography as a medical check

小宮 雅明1, 加藤 寿美子1, 佐々木 美和1, 藤田 あゆみ1, 小川 由佳1, 堀之内 忍1, 北條 里枝1, 松本 沙知子1, 平田 信人2, 鵜飼 徹朗3

Masaaki KOMIYA1, Sumiko KATO1, Miwa SASAKI1, Ayumi FUJITA1, Yuka OGAWA1, Sino HORINOUTI1, Rie HOUJOU1, Satiko MATUMOTO1, Nobuto HIRATA2, Tetuo UKAI3

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器内科, 3亀田総合病院健康管理センター

1Division of ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 2Gastronterology, Kameda Medical Center Hospital, 3Center for Preventive Medical Science, Kameda Medical Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
人間ドックは受診しただけでは目的を達成することができず,受診後の再検査や治療を受ける事が重要である.今回,我々は精密検査が指示され,当院で精査された症例を検討して,人間ドックでの超音波検査の注意点について検討した.
【対象および方法】
2009年5月から2010年4月までに当院人間ドックを受診した6,829例のうち精密検査を指示され,当院で精査された217例である.
【結果】
全6,829例中,精密検査の指示がされたのは413例(6.0%)であった.そのうち当院で精査された症例は217例(3.2%)で,精査の指示症例中52.5%であった.臓器別の内訳は肝臓36名,胆嚢・胆管56例,膵臓75例,腎臓21例,脾臓2例,その他27例であった.精査の結果,治療ないし厳重な経過観察が必要であるとされた症例は13例で当院精査症例中6.0%(全6829例中0.2%)に相当した.13例の内訳は肝細胞癌1例,膵胆管高位合流1例,膵管癌3例,膵内分泌腫瘍1例,IPMN1例,腎細胞癌術後再発1例,卵巣腫瘍1例,腹腔動脈瘤1例,濾胞リンパ腫1例,傍神経節腫1例,胃GIST1例,腹部大動脈瘤2例であった.肝細胞癌の1例は,既に診断がされ経過観察中の症例であった.膵胆管高位合流の1例は,総胆管の紡錘状拡張をきっかけに診断された.膵管癌3例は1例が頭部,1例が体尾部,1例が尾部に存在し,体尾部,尾部の2例は右側臥位での走査で良好に描出された.膵内分泌腫瘍は膵頭部足側に,IPMNは膵鈎部に存在し,膵頭部縦走査での観察で良好に描出された.腎細胞癌術後再発は,右腎細胞癌の術後の経過観察中に,後腹膜と左腎に新たな腫瘤を指摘されて診断された.肝胆膵脾腎以外の部位の症例が7例(53.8%)であった.
【考察】
当院では,肝胆膵脾腎および大動脈を主に人間ドックの超音波検査を行っている.今回,わずか1年の検討であるが,当院ドックで精査を指示された症例の,その後の精査結果を検討した.膵病変は体尾部病変については,右側臥位が仰臥位より病変の指摘が容易であった.膵鈎部を含む膵頭部足側の病変が2例(内分泌腫瘍,IPMN)指摘されており,膵頭部の縦走査での観察の有用性が示唆された.また,肝胆膵脾腎以外の部位が過半数を占めており,これらは大動脈とその周囲の観察を行っているときに発見された症例であった.大動脈およびその周囲組織の観察の重要性が再認識された.当院の精密検査の指示率は6.0%である.この率は決して低くはない.検査時間は当院では平均13.6分(有所見例14.0分,無所見例10.5分)と他施設よりやや長く(第51回人間ドック学会で報告),その点が有所見率の上昇,ひいては,精密検査指示症例の増加につながっている可能性はある.また,当院は精密検査が可能な施設が併設されており,当院で精査した症例が過半数を占めた.この点を今後の当院ドック超音波検査の質の向上に役立てたいと思っている.今後も要精査者のその後の経過を可能なかぎり追跡することが重要と思われる.また,当院で精査されなかった症例の追跡も今後の課題と思われる.
【結語】
当院人間ドックで精査が指示された症例を追跡した結果を報告した.膵は膵頭部の縦走査での観察,右側臥位での体尾部の観察が重要である.また大動脈およびその周囲の観察も重要である.今後も精査結果のフィードバックを心がけたい.