Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍3

(S384)

肝腫瘤性病変に対するARFIの術中適用

The intraoperative application of ARFI in the case of hepatic mass

大道 清彦, 井上 陽介, 高橋 道郎, 金子 順一, 青木 琢, 田村 純人, 別宮 好文, 長谷川 潔, 菅原 寧彦, 國土 典宏

Kiyohiko OMICHI, Yousuke INOUE, Michirou TAKAHASHI, Junichi KANEKO, Taku AOKI, Sumihito TAMURA, Yoshifumi BECK, Kiyoshi HASEGAWA, Yasuhiko SUGAWARA, Norihiro KOKUDO

東京大学医学部附属病院肝胆膵外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery Division, The University of Tokyo Hospital

キーワード :

【背景・目的】
肝腫瘤性病変に対しては,従来より術中超音波検査が有用な診断方法として確立されてきており,現在当科で手術を行う患者全例に使用されている.しかし,術中超音波を用いてもその描出や,良悪の鑑別が困難な病変が存在する.その病変が肝に近い部位にあれば,実際に触ることでその硬さ,形状を評価できるが,肝の深部にあり,触れることが出来ない場合は,その診断に苦慮するケースも存在する.近年ARFI(acoustic radiation force impulse)を用いた肝硬度の定量測定に関する報告が数多く見られるが,肝腫瘤性病変に対し術中にARFIを用いた報告例は存在しない.今回我々はARFIを術中に用いて肝腫瘤性病変の描出率を検討した.
【方法】
超音波測定機器は,Supersonic社(株)のAixplorerを使用した.プローブは,コンベックス型(Supercurved6-1),リニア型(Superlinear15-4)を使用した.手法としては,通常行われている術中超音波検査と同様,プローブを臓器の表面にあて,肝内腫瘤,背景肝の硬度を定量的に測定した.症例は,2010/11/26-12/8に,当科で肝腫瘤性病変に対して肝切除を行った6例,9病変にて,術前体外式,及び肝切除術中に,ARFIによる硬度測定を行った.当研究は,東京大学倫理委員会の承認を得ており,研究参加者全員より書面によるインフォームドコンセントを得ている.
【結果】
9病変のうち,術前に体外からのARFIによる硬度測定が可能であったものは2例のみ(22%)であり,他の7例は,組織弾性のカラーマップを得ることが不可能であった.術中ARFIでは,9例全て(100%)で弾性マップが得られ,病変の硬度の中央値は28.5kPa(9.2 ‐74.1),背景肝の硬度の中央値は13.6kPa(3.7-18.9)であった.うち,2病変は姑息的手術のために切除しなかった.切除された7病変は,高分化型肝細胞癌1個,中分化型肝細胞癌3個,混合型肝癌1個,転移性腺癌1個,該当病変なし(偽腫瘍)1個であった.
【結論】
体外式よりも術中適用におけるほうが明らかに組織弾性のカラーマップを得られやすかった.ARFIを術中に用いることにより,ARFIの性能が最大限発揮されると考えられ,肝腫瘍性病変の硬度を定量的に評価でき,術前に指摘できなかった腫瘤性病変を発見し切除し得る可能性がある.