吉田 昌弘¹, 田中 弘教^{1, 2}, 西村 純子¹, 青木 智子^{1, 2}, 齋藤 正紀², 西上 隆之³, 廣田 誠一⁴, 藤本 治朗⁵, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Masahiro YOSHIDA¹, Hironori TANAKA^{1, 2}, Junko NISHIMURA¹, Tomoko AOKI^{1, 2}, Masaki SAITO², Takayuki NISHIGAMI³, Seiichi HIROTA⁴, Jiro FUJIMOTO⁵, Shuhei NISHIGICHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学超音波センター, ²兵庫医科大学内科・肝胆膵科, ³兵庫医科大学病理学, ⁴兵庫医科大学病院病理部, ⁵兵庫医科大学肝胆膵外科

¹Depertment of Ultrasound Imaging Center, Hyogo Collgeg of Medicine,Hyogo,Japan, ²Depertment of Internal Medicine,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo Collgeg of Medicine,Hyogo,Japan, ³Depertment of Molecular Pathology, Hyogo Collgeg of Medicine,Hyogo,Japan, ⁴Depertment of Surgical Pathology, Hyogo Collgeg of Medicine,Hyogo,Japan, ⁵Depertment of Surgery,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo Collgeg of Medicine,Hyogo,Japan

キーワード :

【目的】
Virtual Touch Tissue Quantification （VTTTQ）法を用いることにより，肝内の任意の部位の硬度測定が可能となる．これを応用することで肝腫瘍性病変の硬さを測定できるため，今回，代表的な肝腫瘍性病変である肝細胞癌，肝血管腫，転移性肝癌の硬さを測定し，その臨床的意義について検討した．
【対象・方法】
2009年10月から2010年12月までの間に当院でVTTQ法を施行した79例（男性　48例，女性31例　年齢 34歳〜85歳　平均年齢 63歳）の肝腫瘍性病変79結節（肝細胞癌 39結節，肝血管腫 22結節，転移性肝腫瘍 18結節）を対象とした．腫瘍診断は，組織診断学あるいは各種画像診断により行った．せん断性波速度（Vs値）は，持田シーメンス社のACUSON S2000を使用し，腫瘍部および腫瘍近傍の非腫瘍部に1cm2のROIをあわせて，3〜5回測定し，平均値より求めた．このVs 値を腫瘍因子や画像所見と比較し，その臨床的意義について検討した．本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている．
【結果】
肝腫瘍性病変の平均腫瘍径はそれぞれ肝細胞癌：径30±17mm，肝血管腫：径29±15mm，転移性肝腫瘍：径29±17mmであった．腫瘍部と非腫瘍部のVs値（m/s）はそれぞれ肝細胞癌：1.70±0.61，1.99±0.80，肝血管腫：1.46±0.73，1.14±0.22，転移性肝腫瘍：2.79±0.87，1.17±0.19，であり，転移性肝腫瘍のVs値は肝細胞癌や肝血管腫と比較して有意に高値であった（P＜0.001）．Vs値が3.3以上では，83%が転移性肝腫瘍であり鑑別に有用であった．肝細胞癌についてはさらに腫瘍サイズ，Bモード所見，分化度についてもVs値を比較検討したところ，腫瘍別（3cm以下：1.61±0.56，3cm以上：1.84±0.68　P=0.25），Bモード所見別（高エコー：1.71±0.37，低エコー：1.52±0.75，モザイク：1.79±0.61），分化度別（高分化型：1.45±0.41，中分化型：1.89±0.59　P=0.12），のいずれにおいても有意差を認めなかった．VTTQの鑑別が実際に有用であった症例を提示する．臨床例で乳癌術後の50歳代女性，S7に13mmの高エコー結節を認め，転移性肝腫瘍も疑われた．しかしVsは1.29m/sと低値であり，転移性腫瘍の可能性は低いと診断できた．この結節はその後，各種画像検査より肝血管腫であることが判明した．
【結語】
VTTQ法は，腫瘍の“硬さ”を診断可能とし，肝腫瘍性病変の鑑別に有用なオプションの一つとなりうる．