Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍2

(S380)

肝細胞癌に対するソラフェニブの治療効果と肝障害予測でのソナゾイド造影USの有用性

Treatment of HCC with sorafenib:early evaluation of treatment responce and side effect using sonazoid enhanced ultrasonography

大濱 日出子1, 井倉 技1, 今井 康陽1, 小来田 幸世1, 福田 和人1, 澤井 良之1, 比嘉 裕次2, 宇戸 朋之2, 関 康2, 高村 学2

Hideko OHAMA1, Takumi IGURA1, Yasuharu IMAI1, Sachiyo KOGITA1, Kazuto FUKUDA1, Yoshiyuki SAWAI1, Yuji HIGA2, Tomoyuki UTO2, Yasushi SEKI2, Manabu TAKAMURA2

1市立池田病院消化器内科, 2市立池田病院放射線科

1Department of Gastroenterology, Ikeda Municipal Hospital, 2Department of Radiology, Ikeda Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
ソラフェニブは肝細胞癌の縮小を期待するものでなく,長期投与により生存期間の延長を狙うものであるが,2010年9月の特定使用成績調査中間報告では,1カ月以上ソラフェニブが継続投与可能であったのは55%に過ぎなかった.当院でもソラフェニブを投与した患者16人中1ヶ月以上継続できたのは9人(56%)で,3ヶ月以上の投与継続が可能であったのは4人(25%)に過ぎない.投与中止の原因は約半数(4/9)が肝機能低下や肝梗塞であった.したがって治療効果だけでなく,肝機能低下などの副作用を予測するバイオマーカーの同定が望まれている.今回,我々は肝細胞癌患者において,ソラフェニブ投与後の早期の癌部,非癌部の血流の変化が,治療効果と肝障害のsurrogate markerになりうるか検討するために,経時的にソナゾイド造影エコーを施行し,治療効果と副作用について検討した.
【対象と方法】
切除不能で,RFAやTACE適応外あるいはTACE不応例でChild-Pugh grade AまたはB,血小板7.5万/μL以上の肝細胞癌患者を2010年6月より登録しprospective studyを行った.ソラフェニブの投与量は体重50kg未満400mg/日,50kg以上600mg/日より開始とし副作用に応じ減量,休薬,中止した.投与前,投与後1日目,3日目,7日目,14日目,28日目に腫瘍マーカー測定,投与前,投与後3日目,7日目,14日目,28日目にソナゾイド造影エコーで血流評価を行った.また投与前,投与後28日目に造影CTを行いmodified RECISTで効果判定をした.血流評価はGE社製LOGIQ 7を用いてソナゾイド0.075ml/kgを肘窩静脈よりbolus shotし,腫瘍部と非腫瘍部でtime intensity curveを作成,Peak Intensity (PI),Time to peak intensity (TtoPI),Gradient (PI/TtoPI),Area of under the curve during wash-in (PIまでのAUC)を計測して検討した.
【結果】
症例は6例,すべて男性で,年齢は中央値75歳 (60-84),HCV 4例,HBV 1例,NBNC 1例,Child-pugh 5点が5例,7点が1例であった.HCC stageはⅢ〜ⅣBで2例にVP3以上の門脈腫瘍栓を認めた.1か月以上投与可能であったのは4例でソラフェニブの維持量は平均500mg/dayであった.1ヶ月後の腫瘍効果判定では PR 1例,SD 3例であったが,SDのうち2例には一部壊死を認めた.PI,TtoPI,gradient,AUC during wash-inの経時的な変化を検討したところ,Day3のgradientが低下していた3例は1ヶ月後のCTで壊死を認め,PIVKA-ⅡはDay14で著明な上昇を認めた.またソラフェニブ継続例と中止例で非癌部のDay3のgradientを比較したところ,中止例の方が継続例に比べ低下していた.また門脈腫瘍栓の有無で非腫瘍部のgradientを比較したところ,VP3,4症例ではgradientの著しい低下を認めた.
【結論】
 ソラフェニブ投与3日後の腫瘍部及び非腫瘍部のgradientが治療効果判定,副作用予測に有用である可能性が示唆された.特に門脈腫瘍栓があると非腫瘍部の血流が低下し,ソラフェニブの治療成績不良の要因のひとつになっている可能性が示唆された.