塩澤 一恵¹, 渡邉 学¹, 和久井 紀貴¹, 永井 英成¹, 飯田 和成¹, 丸山 憲一², 工藤 岳秀², 神山 直久³, 住野 泰清¹

Kazue SHIOZAWA¹, Manabu WATANABE¹, Noritaka WAKUI¹, Hidenari NAGAI¹, Kazunari IIDA¹, Kenichi MARUYAMA², Takahide KUDOU², Naohisa KAMIYAMA³, Yasukiyo SUMINO¹

¹東邦大学医療センター大森病院消化器内科, ²東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, ³東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部

¹Gastroenterology and Hepatology, Toho University Medical Center Omori Hospital, ²Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori Hospital, ³Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
これまでわれわれは進行肝細胞癌（HCC）に対するソラフェニブの早期治療評価におけるソナゾイド造影超音波（CEUS）による到達時間parametric imaging（AtPI）の有用性について検討してきた．
【目的】
　進行HCCに対するソラフェニブ投与症例において治療前後でCEUSによるAtPIを用いた画像解析を行ない，解析結果をdynamic CTによる治療成績（modified RECIST）と比較することにより，その早期治療評価における有用性について検討した．
【方法】
　対象はソラフェニブ投与基準を満たす進行HCC症例12例．全例男性，平均年齢67.8歳，全例Child-pugh A，投与前AFP値は3.2〜22516ng/ml（中央値153.5ng/ml），ソラフェニブ初回投与量は800mg/日が5例，400mg/日が7例．各症例で対象として経過観察が可能な一結節または門脈腫瘍塞栓を選択し，ソラフェニブ投与前，投与2週，4週後に同一断面かつ同じ撮像条件でCEUSを施行した．血管相（0〜40秒）を動画で保存，AtPIによる解析を行なった．対象の近傍にある太い動脈に造影剤が到達した時点を基準点とし，基準点から対象までの造影剤到達時間を0.5秒間隔に設定してCM画像を作成した．得られたCM画像において，対象に対して最大にROIを設定し，基準点からROI内の造影剤到達時間の平均値（mean time：MT）を算出した．治療前のMTを前値とし，治療2週，4週後におけるMTの各々の差を求めた．差が0以上となった症例をMT（+）群，差が0未満となった症例をMT（-）群と判断した．治療2週，4週後における各々のMTの差を治療4~8週後のdynamic CTによる治療成績と比較検討を行なった．
【結果】
　12例中6例がMT（+）で，6例がMT（-）であった．SD（不変）〜PR（部分奏功）を呈した6例は全例MT（+）で，PD（進行）を呈した6例はMT（-）であった．
【結語】
症例数が少なく，観察期間が短いためoverall survivalについては言及できないが，AtPIで得られたMTの変化を検討することは，進行HCCに対するソラフェニブの早期治療効果判定に有用である可能性が示唆された．