Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2011 - Vol.38

Vol.38 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S378)

食事摂取が下腸間膜動脈血流に及ぼす影響の評価

Effect of meal on inferior mesenteric arterial blood fow

竹之内 陽子1, 畠 二郎2, 中武 恵子1, 谷口 真由美1, 岩井 美喜1, 麓 由起子1, 小島 健次1, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 春間 賢3

Yoko TAKENOUCHI1, Jiro HATA2, Keiko NAKATAKE1, Mayumi TANIGUCHI1, Miki IWAI1, Yukiko FUMOTO1, Kenji KOJIMA1, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学消化管内科

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound,Department of Clinical pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Gastroenterology, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
食事摂取とほぼ同時に大腸の蠕動運動が亢進する現象は一般に胃結腸反射と呼ばれており,過敏性腸症候群の中には蠕動運動が亢進し食事摂取後すぐに腹痛を訴える患者も存在する.その原因として上腸間膜動脈(以下SMA)-下腸間膜動脈(以下IMA)血流の不均等分布によるIMA領域の相対的虚血の可能性も考えられる.食事摂取によりSMA血流が増加することは広く知られているが,IMA血流に関して検討した報告は皆無である.そこで,体外式超音波検査を用いて食事摂取がIMA血流に及ぼす影響について検討した.
【対象と方法】
基礎疾患を有さない健常人男性4名,女性11名.年齢は20〜22歳(平均年齢21.0±0.6歳)に対し,安静仰臥位で食事前と試験食摂取15〜30分後におけるSMAおよびIMAの最高流速,平均流速,断面積,血流量を測定した.連続して最低5回測定し,測定値としては最大値と最小値を除いた残りの平均値を採用した.測定部位は各々腹部大動脈分岐より約1cmとした.試験食は液状バランス栄養飲料360g(ウイダーinゼリーエネルギーイン;森永製菓),機種は東芝社製SSA-700A AplioTM,6〜7.5MHzリニアプローブを用いた.統計学的検討にはt検定を行い,p<0.05を有意差ありとした.
【結果】
全例でSMA,IMA両者の測定は可能であり,食後に腹痛を訴えた症例はいなかった.(最高流速) SMA:14例で上昇,1例で下降.前128.0±28.2cm/sec(平均±標準偏差,以下同様),後169.7±34.5cm/sec.IMA:11例で上昇,4例で下降.前104.3±20.0cm/sec,後112.2±17.0cm/sec.(平均流速) SMA:全例で上昇.前19.6±4.0cm/sec,後31.8±10.0cm/sec.IMA:11例で上昇,4例で下降.前11.1±3.1cm/sec,後12.5±2.8cm/sec.(断面積) SMA:10例で拡張,5例は変化なし.前27.0±11.2mm2,後29.9±11.8 mm2.IMA:8例で拡張,7例で縮小.前6.5±2.2 mm2,後6.6±2.1 mm2.(血流量)SMA:全例増加.前285±119.1ml/min,後521±194.7ml/min.IMA:7例で増加,6例で変化なし,2例で減少.前42.7±13.9 ml/min,後48.0±16.1 ml/min.
【考察】
 食事摂取によるSMAの血流速度,血流量の増加には消化管運動の関与が示唆されており,本検討でも過去の報告と同様血流速度および血流量の有意な増加を認めた.SMA血流が増加すれば相対的にIMA血流の低下が起こるのではないかと推論したが,IMA血流は食事摂取により最高流速,平均流速ともに全体としてむしろ上昇傾向を呈し,また個々の反応は様々で一定の傾向を認めず,血流量に関しても同様であった.IMA血流における個々の変動にばらつきを生じた原因に関しては,検査精度も含め種々の要因が考えられるが,今回の検討では明らかにすることは出来なかった.
【結語】
 健常人における今回の検討では食事摂取によるIMA血流の変化は一定の傾向を認めなかった.