渡部 多佳子¹, 石田 秀明¹, 小松田 智也¹, 古川 佳代子¹, 畠山 千枝子¹, 鶴田 聡¹, 加賀屋 津穂子¹, 横山 一二美¹, 長沼 裕子², 大山 葉子³

Takako WATANABE¹, Hideaki ISHIDA¹, Tomoya KOMATSUDA¹, Kayoko FURUKAWA¹, Chieko HATAKEYAMA¹, Satoshi TSURUTA¹, Tsuhoko KAGAYA¹, Hifumi YOKOYAMA¹, Hiroko NAGANUMA², Yoko OHYAMA³

¹秋田赤十字病院超音波センター, ²市立横手病院内科, ³秋田組合総合病院臨床検査科

¹Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, ²Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, ³Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
腹部超音波検査が一般スクリーニングに多用されるようになり，合理的なトレーニングと教育がさらに大きな意味を持ち始めている．従来消化管に関しては胃と大腸が中心で十二指腸に関してはあまり述べられてこなかった．今回我々は下記のような検討を行い，日常検査の走査法を考える上で示唆に富む結果が得られたので報告する．
【使用診断装置】
東芝社製：Aplio XG，GE社製：Logiq E9（共に中心周波数：3-4MHz）
【対象と方法1】
健常人20名について，（a）通常の上腹部走査法（通常法）と，（b）プローブの力で胃液を十二指腸に送り膵頭部を囲む方法（額縁法）の十二指腸描出能を比較した．なお，“額縁法”とは，実際には被検者の体型や臓器の状態にあわせ微調整はするが，プローブを反時計軸方向にゆっくり回転させ，胃液を胃から十二指腸，そして十二指腸内を下方に移動させる走査法を総称したもの．
【結果1】
（a）通常法，球部（4/20,20%），下降脚（2/20,10%），水平脚（0/20,0%），（b）額縁法，球部（15/20,75%），下降脚（9/20,45%），水平脚（4/20,20%）で，額縁法での描出能が勝っていた．
【対象と方法2】
下記の十二指腸疾患20例を対象に“額縁法”が診断にどの程度有用か，（a）羅患部位の同定と（b）性状把握に関し，通常法と額縁法の比較を通し検討した．
疾患の内訳:十二指腸癌3例，十二指腸潰瘍5例，十二指腸狭窄12例（膵癌6例，リンパ節腫大2例，その他4例）．
【結果2】
（a）羅患部位同定：十二指腸癌（通常法1/3，額縁法3/3），十二指腸潰瘍（通常法2/5，額縁法4/5），十二指腸狭窄（通常法3/12，額縁法10/12），（b） 羅患性状把握：十二指腸癌（通常法1/3，額縁法3/3），十二指腸潰瘍（通常法2/5，額縁法4/5），十二指腸狭窄（通常法2/12，額縁法9/12）であり，両項目ともに額縁法が有用であった．
【まとめ】
十二指腸は胃と連続する消化管で，膵頭部を囲むように走行することから，位置的には認識し易い臓器である．しかし日常に超音波検査で十二指腸は比較的大まかな観察に留まっているのは，a）多くの場合，十二指腸液は量的に，十二指腸自体の観察（内腔-壁のコントラストをつける程）を可能にするほどは無いこと，b）十二指腸内のガスが十二指腸の観察能を低下させていること，などの理由によると思われる．今回，額縁法として提示したプローブの回転移動は，人為的に，超音波観察下に，胃液を十二指腸内に送り込みながら，ガスを視野内から排除するというもので，a）b）の問題点を同時に軽減する効果がある．なお検討（2）で示されたように，額縁法は十二指腸近傍臓器の観察精度も向上させることから，膵頭部とその周辺の超音波診断能も向上させると期待される．額縁法を加味することで十二指腸の観察精度が向上する．口演では，額縁法と代表的疾患を動画で供覧したい．