杉本 勝俊¹, 齊藤 和博², 平良 淳一¹, 今井 康晴¹, 森安 史典¹

Katsutoshi SUGIMOTO¹, Kazuhiro SAITO², Junichi TAIRA¹, Yasuharu IMAI¹, Fuminori MORIYASU¹

¹東京医大消化器内科, ²東京医大放射線科

¹Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University, ²Radiology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
肝細胞癌（HCC）の分化度診断における，Gd-EOB-DTPA造影MRI（EOB-MRI）肝細胞相とソナゾイド造影超音波（US） Kupffer相の信号程度は，HCCの分化度と相関があるか検討する．さらに相関があれば，どちらのモダリティがHCCの分化度診断において有用であるか評価する．
【方法】
本研究は，6名の診断医によるoff-siteでの観察者実験とした．対象は2008年1月から2009年4月までに，病理学的にHCCもしくはdyaplastic nodule（DN）と診断され，当院でEOB-MRIと造影USをほぼ同時期（1カ月以内）に施行した66例78結節である．平均腫瘍径は18.6±10.9mm，DN/well（w）/moderate（m）/poor（p） HCC:5/33/29/11結節である．読影実験では，各読影医が，結節毎にEOB-MRI肝細胞相と造影US Kupffer相（動画）の画像を独立に読影を行い，背景肝との相対的な結節部の信号程度を評定した．評定は50mmのスケールバーを用いた連続確信度法で行い，バーの左端（完全に低信号）からチェックした部位までの距離をミリ単位で計測し，ROC解析の入力データとした．両画像セットの評定結果に対してROC解析を行い，ROC曲線下面積（AUC）による診断能の評価を行った．
【成績】
組織学的分化度と，EOB-MRI肝細胞相（r=0.400, P＜0.01）と造影US Kupffer相（r=0.597, P＜0.01）の信号程度は相関を認めた．DN vs. wmpHCC，DN, wHCC vs. mpHCC，およびDN, wmHCC vs. pHCC の2つのカテゴリーに分類した場合のAUCによる診断能の評価では，造影US/EOB-MRI:0.705/0.785 （P=0.517）, 0.790/0.687 （P=0.093）, および 0.871/0.716 （P=0.005） であり，pHCCの診断には造影USが有意に良好であった．
【結論】
EOB-MRIのHCC検出感度は非常に高く，HCCの拾い上げには必須の検査法である．しかし，分化度の評価には，造影USを加えて評価することが必要である．